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【レポート】多摩川を舞台に実践研修、東京都が「ラフティングと川釣り体験ワークショップ」を開催

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東京都は7月1、2日、「令和8年度 誰もが楽しめる自然体験型観光推進事業」の一環として、「ラフティングと川釣り体験支援モニターツアー(障害者のリバーアクティビティ体験をサポートするモニターツアー)」を実施した。ユニバーサルツーリズムの普及や自然体験の受入環境づくりに取り組む専門家を講師に迎え、1泊2日で多摩川でのラフティングや川釣り体験を通じて、河川エリアでのレジャー体験の支援や運営について研修を行った。

東京都では、障害者や高齢者等が、東京の豊かな自然を安心して楽しめる観光を推進するため、旅行業者、体験型観光提供事業者等を対象として、障害者等向け自然体験型観光プログラムの運営ノウハウを提供する取り組みを進めている。

モニターツアーには、応募した障害者3人とその介助者、旅行会社、観光関連事業者、自然体験型プログラムを提供する事業者など約30人が参加した。以下、ワークショップの様子を紹介する。

多摩上流でラフティングを体験する参加者
多摩上流でラフティングを体験する参加者

会場となったのは、東京都心から約1時間半でアクセスできる青梅市の多摩川上流エリア。豊かな森林と清流に囲まれ、ラフティングやカヌーなどのリバーアクティビティが盛んな地域で、都市近郊にありながら本格的な自然体験を楽しめることが魅力だ。

初日は青梅市の「たまぐーセンター」でワークショップを開催し、障害者や高齢者が自然体験を楽しむための支援方法や受入体制について学んだ。その後、多摩川沿いの柚木の川原へ移動し、アウトドア用車いすや補助機材を活用しながら、河原での移動や乗船サポートなど、ラフティング時の支援方法を体験した。

2日目は「奥多摩フィッシングセンター」で川釣り体験を実施。車いす利用者へのサポート方法などを確認しながら、誰もが楽しめる自然体験プログラムの運営について理解を深めた。体験後には意見交換会を行い、アクセシブルな自然体験商品の造成や受入環境整備に向けた課題を共有した。

車いすリフト付き福祉車両を使って移動する障害者
車いすリフト付き福祉車両を使って移動する障害者

東京の川を誰もが楽しめる場に、リバーアクティビティの可能性を学ぶ

初日の座学では冒頭、東京都産業労働局観光部受入環境課の富永信生課長代理(受入環境調整担当)が登壇し、東京都が推進する「誰もが楽しめる自然体験型観光推進事業」の目的を説明した。

富永氏は、同事業が今年度で3年目を迎えたことに触れ、「年齢や障害の有無に関わらず、誰もが東京の豊かな自然を安心して楽しめる観光の実現を目的に取り組んでいる」と説明。山、川、海といった自然フィールドでアクセシブルな観光体験の可能性を検証し、事業化につなげることを目指していると紹介した。

今回実施するラフティング体験や川釣り体験については、「車いす利用者が本当に体験できるのかと感じる方もいると思う」とした上で、「適切な知識や入念な事前準備、補助機材、サポート体制が整えば、自然体験はできないものから事業として提供できるものへ変えられる」と強調。参加者には、自社サービスとしてどう提供できるかという視点で体験してほしいと呼び掛けた。

また、東京都の補助制度についても紹介。アウトドア用車いすや車いすけん引装置、乗降スロープなどの備品・施設整備を支援しており、補助率は対象経費の5分の4以内、上限200万円。「新たな顧客獲得や観光商品の高付加価値化にもつながる」と述べ、体験を通じた事業展開を促した。

“できない”を“提供できる”へ、自然体験を観光商品に変える実践力

「誰もが楽しめる自然体験型観光」ワークショップでは、プランニングネットワークユニバーサルツーリズムアドバイザー(office FUCHI代表)渕山知弘氏が登壇。「東京の川を誰もが楽しめるリバーアクティビティに!」をテーマに、障害者や高齢者が自然体験を楽しむための受入環境づくりや、旅行商品化に必要な視点について講義した。

渕山氏は、旅行会社で30年間勤務し、そのうち22年間にわたりバリアフリー旅行、現在のアクセシブルツーリズムに携わってきた経験を紹介。現在は、全国の自治体や観光事業者などに対し、受入環境整備や商品造成に向けた助言を行っている。

ワークショップの様子
ワークショップの様子

講義では、2000年に実施した視覚障害者向けの四万十川ラフティングを紹介。当時は現地状況や運営方法など不安要素もあったが、実施経験から事前確認や下見の重要性を学び、「この時の経験、反省がその後のさまざまなプログラムづくりのベースになった」と振り返った。

また、重度障害者施設による越後湯沢でのラフティング旅行では、車いす利用者や座位を保つことが難しい参加者の受け入れに向け、事前に現地を訪問。乗船方法や姿勢保持、宿泊時の食事形態や部屋、移動方法などを確認し、参加者に合わせた環境づくりを行った事例を紹介した。

渕山氏は「団体側からのニーズ、そして何を宿泊施設側に伝えなくてはいけないか。その通訳のような役割が旅行会社には求められる」と述べ、利用者と受入事業者をつなぐ調整力の重要性を訴えた。

さらに、リバーアクティビティでは、車いす利用者が川へ「どこまで近づけるか」が重要だと指摘。バスの進入場所や乗降場所、補助が必要な区間などを事前に確認する必要性を説明した。

office FUCHI代表でユニバーサルツーリズムアドバイザーの渕山知弘氏
office FUCHI代表でユニバーサルツーリズムアドバイザーの渕山知弘氏

今回の青梅ラフティングでも現地調査を行い、車いす利用者でも参加しやすい場所や川へのアクセス、乗船・下船方法などを検証。渕山氏は「車いすでどこまでアクセスできるか、アプローチできるかを確認することが大切」と話し、地域事業者との連携によってプログラム実現につながるとした。

最後に、今回の体験は既に地域で活動する事業者と連携して行う点が特徴だと紹介し、「実際に販売できたり、お客様を送客できる場所であることを頭に置いて、午後の体験に臨んでほしい」と呼び掛けた。

多摩川の清流を誰もが体感、安全管理と工夫で広がる川の体験

続いて、みたけレースラフティングクラブ代表の柴田大吾氏が、午後に実施するラフティング体験について説明した。同クラブは多摩川をフィールドに活動しており、今回の体験では青梅市内を流れる多摩川約5キロのコースを下る。

みたけレースラフティングクラブ代表の柴田大吾氏
みたけレースラフティングクラブ代表の柴田大吾氏

柴田氏は、初めて体験する参加者も多いことから、ラフティングの特徴や安全管理、楽しみ方について解説。「8人乗りの大型ゴムボートに乗り、チームで力を合わせながら川を下るスポーツ」と紹介し、穏やかな流れだけでなく、水しぶきを浴びる急流ポイントなど川ならではの魅力を伝えた。

今回のコースは柚木の川原から釜の淵公園までの約5キロで、約1時間かけて川を下る。柴田氏は「東京感ゼロの大自然を感じてほしい」と話し、都内にありながら清流や豊かな自然を楽しめることを紹介した。

また、参加者全員でパドルを使い、息を合わせて進む一体感もラフティングの魅力だと説明。一方で、安全面ではヘルメットやライフジャケットの着用、パドルの扱い方、万が一落水した場合の対応などを確認し、「まずは安全に、けがなく体験してもらうことが大切」と呼び掛けた。

さらに、「やってみたい、挑戦してみたいことがあれば、インストラクターに相談してほしい。できる限りサポートしていきたい」と話し、参加者は装備や安全確認を終えた後、多摩川でのラフティング体験に臨んだ。

補助機材の操作を確認、多摩川でリバーアクティビティに挑戦

ワークショップ後は多摩川沿いの柚木の川原へ移動し、ラフティング体験に向けてアウトドア用車いす「HIPPOcampe(ヒッポキャンプ)」や水辺で利用できる「モビチェア」、車いすけん引装置「JINRIKI」の使用方法を渕山氏が指導した。

HIPPOcampe(左)、モビチェア(中央)、JINRIKI
HIPPOcampe(左)、モビチェア(中央)、JINRIKI

参加者は実際に機材に触れながら、それぞれの特徴や安全な取り扱い方法を確認。河原特有の石や砂利、凹凸のある地面での移動を体験し、自然環境の中で利用者をサポートする方法を学んだ。

また、押す側、乗る側の双方を体験し、声掛けや介助時の役割分担、段差や傾斜での注意点など、実際の受入現場を想定した操作方法を確認。補助機材の活用と支援者同士の連携によって、自然体験の可能性が広がることを実感した。

その後、参加者は学んだ支援方法を実践しながらラフティングボートへ乗船。インストラクターや支援者同士で声を掛け合い、多摩川の自然を体感するリバーアクティビティに挑戦した。

障害者の乗船をサポート
障害者の乗船をサポート

ラフティング後には、参加者から「車いすを利用していても、このような川の体験ができるとは思わなかった」「家族で初めて一緒に水遊びを楽しむことができ、忘れられない経験になった」など喜びの声が聞かれた。また、支援する側の参加者からも「補助機材や周囲のサポートがあれば、自然体験の可能性は大きく広がると感じた」といった感想が寄せられた。

多摩川の急流に乗ってラフティングを楽しむ参加者
多摩川の急流に乗ってラフティングを楽しむ参加者

参加者は多摩川の自然を楽しみながら、障害の有無に関わらず同じ時間や体験を共有することの価値を実感。リバーアクティビティが、誰もが楽しめる観光コンテンツとなる可能性を感じる機会となった。

ラフティング終了後も障害者の移動をサポート
ラフティング終了後も障害者の移動をサポート

五感で感じる川の魅力、渓流釣りから広げるアクセシブル観光

2日目は、奥多摩町の「奥多摩フィッシングセンター」を会場に、渓流釣り体験を実施した。体験に先立ち、NPO法人ユニバーサルツーリズム総合研究所理事長の長橋正巳氏がワークショップ2部として、「渓流釣りなど渓流遊び体験時の注意点と必要な環境整備」をテーマに講義。障害の有無や年齢に関わらず自然を楽しむための受入環境づくりや、観光商品として提供する際に必要な視点について説明した。

ワークショップ2部の様子
ワークショップ2部の様子

長橋氏は、自然体験型観光の商品造成に必要な環境整備として、「物理的なバリア」「ルールのバリア」「情報のバリア」「心のバリア」という4つの社会的障壁を取り除く視点が重要だと紹介した。渓流釣りでは、河原までのアクセスや砂利道、急坂、段差、バリアフリートイレの有無などが車いす利用者にとって課題になる一方、事前確認や補助機材、サポート人材の準備によって参加できる環境を整えられることを説明した。

車いすユーザーにとっての自然体験・釣り企画の魅力として、次のポイントを挙げた。

①身体的なハンディキャップを超越できる
②自然と一体になるリフレッシュ空間
③バリアフリー環境の広がり
④家族や仲間との共通の趣味になる

視覚障害者については、竿やリールから伝わる魚の振動、仕掛けが着水した時の音を頼りに魚との駆け引きを楽しめると説明。川のせせらぎや肌に感じる風、太陽の温もりなど、五感で自然を体感できることも魅力に挙げた。

NPO法人ユニバーサルツーリズム総合研究所理事長の長橋正巳氏
NPO法人ユニバーサルツーリズム総合研究所理事長の長橋正巳氏

聴覚障害者については、釣りはウキの動きや竿先に伝わる魚の感触など、視覚と触覚を中心に楽しめるアクティビティであると紹介。音声に頼らず楽しめる一方で、釣り道具の使い方や危険情報を伝えるため、筆談アプリや音声文字変換アプリ、コミュニケーション支援ボードなどの活用が有効だと説明した。

また、渓流釣りならではのリスクとして、濡れた岩やコケによる滑落・転倒、上流部の天候急変やダム放流による急な増水、クマや毒虫・毒蛇など生き物との遭遇、遊漁券の未購入による法令違反などを挙げ、自然環境での体験には安全管理と事前準備が欠かせないとした。

講義では、実際の釣り竿を使いながら、参加者に竿の長さや仕掛け、魚が掛かった際の感覚などを紹介する場面もあった。体験前に道具に触れることで、釣りのイメージを共有し、安心して参加できる環境づくりにつなげた。

最後に長橋氏は、釣りをテーマにした自然体験型観光企画に必要な体制として、参加者のニーズ把握、身体状況や求める配慮のヒアリング、現地のバリア・バリアフリー状況の情報収集、必要な機器や人材の投入、安全確保、接遇研修などを挙げた。その上で、「知る、覚える、動く、考える」という意味を持つ「知覚動考」を紹介し、「ともかく動こう、釣り体験を企画しよう」と呼び掛けた。

釣りを楽しむ工夫を学び、奥多摩の清流で魚との駆け引きを体験

講義後は、奥多摩フィッシングセンターのスタッフが、渓流釣り体験に向けて釣り方や魚を釣るためのポイントを説明した。参加者には餌としてイクラとブドウ虫を用意。イクラは匂いで魚を寄せる力が強い一方、水中では長時間持ちにくく、ブドウ虫は匂いの弱いものが長持ちするなど、それぞれの特徴を紹介し、「状況に合わせて使い分けてほしい」と呼び掛けた。

また、初心者でも魚の反応が分かりやすいウキを使った釣り方を説明。魚が泳ぐ水深に合わせてウキの位置を調整することが重要で、「魚がいる場所に餌が届くよう調整することが大切」とアドバイスした。

さらに、魚が餌を食べやすい流れの緩やかな場所を探すなど、魚の動きや環境を観察しながら釣りを楽しむポイントを伝えた。

奥多摩フィッシングセンターは、障害者、高齢者など、河原での釣りが難しいという方に向け、フラットな足場、落下防止の手すりなどを整備したエリアもある。今回は自然体験型観光として、河原での釣りを楽しめるように、「JINRIKI」なども活用し、車いす利用者も水辺近くまで移動。参加者は釣り竿を手に取り、スタッフやサポートメンバーとともに渓流釣りに挑戦した。参加者同士が声を掛け合いながら移動や釣りをサポートし、自然フィールドでの受入方法を実践的に確認した。

誰もが楽しめる自然体験を目指し、渓流釣りプログラムを体験
誰もが楽しめる自然体験を目指し、渓流釣りプログラムを体験

釣り体験では、餌付けやウキの調整、魚が集まる場所探しなど、スタッフからアドバイスを受けながら魚との駆け引きを体験。竿先に伝わる魚の動きや引きの感覚を味わい、魚を釣り上げた瞬間には参加者から笑顔や歓声が上がった。

清流を舞台に、障害の有無に関わらず渓流釣りを楽しむ参加者
清流を舞台に、障害の有無に関わらず渓流釣りを楽しむ参加者

参加者からは「車いすで川辺まで来て釣りができるとは思わなかった」「家族で一緒に水辺の自然を楽しめたことがうれしい」といった声も聞かれた。体験を通じて、自然環境の中でも補助機材の活用や周囲のサポートによって、誰もが川の魅力を楽しめる可能性を感じる機会となった。

「できない」を越える体験に、参加者が語った自然体験型観光の可能性

2日間のプログラム終了後には、参加者による意見交換会が行われた。旅行会社や観光事業者、介護・福祉関係者、車いす利用者やその家族などが参加し、ラフティングや渓流釣りを通じて感じたことや、今後の取り組みについて意見を交わした。

参加者からは「今回参加して知らないことがたくさんあった。障害のある方の目線を理解することの大切さを感じた。東京都の補助制度なども活用しながら、できることを進めていきたい」といった声が上がった。

また、旅行会社の参加者は「車いす利用者がラフティングをどうしたら楽しむことができるのかを知りたくて参加した。実際に体験したことで、こうした旅行を求めている人に届けていきたい」と話した。

介護・外出支援に携わる参加者からは「ラフティングはできないと思っていたが、実際に体験すると楽しめることが分かった。できないと思っている人にも、こうした体験ができることを伝えていきたい」との意見も寄せられた。

車いす利用者からは「海や山、川は難しいと思っていたが、今回ラフティングや釣りを楽しむことができた」「川遊びはできないと思っていたが、勇気を出して参加してよかった」と喜びの声が上がった。

一方で、実際の商品化や受け入れに向けては、利用者ごとに必要なサポートが異なることや、事前確認・準備の重要性などの課題も共有された。参加者は、今回の体験を通じて、障害の有無にかかわらず自然を楽しめる環境づくりへの理解を深めた。

アクセシブルツーリズムへの可能性、商品化に向けた取り組みを話す参加者
アクセシブルツーリズムへの可能性、商品化に向けた取り組みを話す参加者

最後に、東京都から富永課長代理が総括した。富永氏は「最初から難しいと判断するのではなく、どうやって実現していくのかを考える視点が非常に大事」と強調。補助器具の活用やサポート体制を整えることで、これまで難しかった体験もサービスとして提供できる可能性があると述べた。

東京都産業労働局観光部受入環境課の富永信生課長代理(受入環境調整担当)
東京都産業労働局観光部受入環境課の富永信生課長代理(受入環境調整担当)

また、「自然体験型観光は今後ますます重要性が大きくなり、市場も拡大している。アクセシブル対応は事業者の皆様にとっても大きな可能性がある」と説明。「今回の経験を現場に持ち帰り、商品造成やサービス改善につなげていただきたい」と呼び掛けた。

参加者から寄せられた意見や課題についても「今後の施策改善に非常に貴重なもの」とし、「2日間、皆さん怪我なく楽しんでいただいて本当に良かった」と述べ、ワークショップを締めくくった。

東京の自然の中で、誰もが楽しめる旅の実現に向けた一歩を踏み出した参加者
東京の自然の中で、誰もが楽しめる旅の実現に向けた一歩を踏み出した参加者

【参考】

東京都「誰もが楽しめる自然体験型観光推進事業補助金」の詳細は、以下URLから。

https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/tourism/kakusyu/nature

東京都「誰もが楽しめる自然体験型観光」特設サイトは、以下URLから。

https://www.sangyo-rodo1.metro.tokyo.lg.jp/tourism/accessible/na

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