JR北海道は9月16日、外部有識者らで構成する「稼ぐ力プロジェクトチーム」の提言を公表した。鉄道を中核としながら、観光、不動産、物流、スポーツ・エンターテインメントなど非鉄道事業への投資を拡大し、北海道の成長機会を取り込む事業構造に転換する。年内をめどに新たな事業推進組織を設け、千歳線沿線の開発や高付加価値な観光商品の造成などを進める構想を示した。
プロジェクトチームは、JR北海道が「JR北海道グループ中期経営計画2026」のもとで進める収益拡大策をさらに強化するため設置。エスコン、レバンガ北海道、ANAホールディングス、ファイターズ スポーツ&エンターテイメント、北海道エアポート、大井川鐵道などの経営者らが議論に参加した。
千歳線を「イノベーションベルト」に
提言では、札幌―苗穂―新札幌―Fビレッジ―北広島―恵み野―ラピダス―新千歳空港を結ぶ千歳線沿線を「北海道でもっとも成長する“イノベーションベルト”」と位置付けた。
沿線では、札幌駅周辺再開発や苗穂工場跡地、ラピダスを中心とした半導体産業、北広島のボールパーク、ファイターズのファーム施設など複数の大型プロジェクトが進む。JR北海道には、不動産や物流、観光、スポーツ・エンターテインメントなどへ戦略的に投資する新組織を年内に設立することを提言している。
中でも約20ヘクタールの苗穂工場用地をフラッグシップ開発に位置付ける。歴史ある工場や倉庫を生かしながら、北海道各地の食材を鉄道で集めるマルシェや加工産業など、食・鉄道・物流・地域産業を組み合わせた都市モデルを目指す考えを示した。
「赤い星」「青い星」を高付加価値観光の核に
観光分野では、鉄道事業から「観光地域振興事業」への発展を打ち出した。新たな観光列車「赤い星」「青い星」を北海道の鉄道ブランドの象徴とし、地域の食や体験を組み合わせた高付加価値商品として育成する。富裕層やインバウンドを取り込み、高単価の観光地域振興ビジネスを確立することを提言した。
提言では、旅を単なる移動ではなく「物語」と捉え、地域ごとの食や生産者の思いをつなぎ合わせることが重要と指摘。食、宿泊、地域体験を一体化し、「100万円の価格帯の商品を売れるビジネスモデル」の構築も目標として掲げた。
釧網線・石北線も観光資源として活用
路線維持が課題となる「黄線区」についても、観光の視点から活用する方向性を示した。提言では、釧網線や石北線などには「唯一無二の観光資源としての潜在力」があるとして、観光列車などで戦略的に活用することを提案。地域と協議しながら、鉄道路線そのものを観光資源として生かす可能性を探る。
ニセコや富良野など、インバウンドや富裕層需要の拡大が期待できる地域への投資も求めた。旅行会社としての商品造成を強化し、鉄道だけでなく宿泊や食、地域体験まで含めた旅行商品として収益化する。
航空との連携で北海道周遊を促進
航空会社との連携も観光戦略の柱に据えた。航空券、鉄道、宿泊などを一体的に予約・利用できる環境を整え、乗り継ぎ時間や手荷物輸送も含めたシームレスな移動を目指す。
さらに航空会社や旅行会社と共同で「北海道キャンペーン」を展開するほか、鉄道を組み込んだ修学旅行の誘致、景観や食を活用した富裕層向け旅行商品の造成も提案した。
提言では、非鉄道事業の成長を加速させる一方、安全を最優先とする鉄道事業が中核であることは変わらないと強調した。北海道の半導体産業、インバウンド、食、スポーツ・エンターテインメントなどの成長機会を取り込み、JR北海道を「総合的なモビリティ・地域価値創造企業」へ進化させることを求めている。