国土交通省は8月28日、令和8年熊本地震への対応として、2026年度予備費438億円を使用すると発表した。同日、閣議決定した。内訳は道路や河川、港湾などの災害復旧等に283億円、観光復興に向けた支援に155億円。観光分野では、熊本県をはじめ九州地方で相次いでいる宿泊予約のキャンセルに対応するため、旅行・宿泊料金の割引支援や、JNTOによる訪日プロモーションを実施し、九州の旅行需要の早期回復を図る。
国交省は、地震による直接的な被害を受けたインフラの復旧と、風評被害などによる観光需要の落ち込みへの対策を並行して実施する。道路、河川、港湾の復旧に加え、鉄道の代行輸送や生活用水確保など地域の生活・移動基盤を支援するとともに、九州地方全体への旅行需要を喚起する。
九州旅行を50%割引、熊本・鹿児島は60%
観光復興に向けた支援には154億9600万円を充てる。国交省によると、令和8年熊本地震の発生後、熊本県だけでなく九州地方全域で宿泊予約のキャンセルが多数発生している。地元の意見も踏まえ、国内旅行者などを対象とした旅行・宿泊料金の割引を実施し、観光需要を喚起する。
割引対象は、九州地方で1泊以上する旅行・宿泊商品。旅行・宿泊料金の50%を支援し、キャンセルによる観光への影響が大きい熊本県と鹿児島県については60%に引き上げる。対象期間は10月1日宿泊分からとする。
支援限度額は、宿泊単体商品と交通付き宿泊旅行商品について1人1泊2万円。交通付き宿泊旅行商品で2泊以上の場合は3万円、宿泊地が2県以上となる周遊型旅行商品は3万5000円とする。複数県を巡る旅行商品にも支援枠を設け、被災地域だけでなく九州広域での旅行需要の回復を図る。
事業は観光庁から九州各県に補助金を交付し、旅行業者、宿泊事業者、宿泊予約サイトなどが割引価格で旅行・宿泊商品を販売する仕組み。具体的な販売方法などは各県などを通じて展開する。
JNTO、風評被害防止へ訪日プロモーション
インバウンドについては、日本政府観光局(JNTO)による風評被害対策の訪日プロモーションを集中的に実施する。
地震の影響を受けた地域について、復旧状況を踏まえながら観光地の現状や地域の魅力に関する正確な情報を発信する。災害そのものの影響だけでなく、被災していない観光地まで旅行が控えられる風評被害を防ぎ、訪日旅行需要の回復につなげる。
具体的には、現地の正確な状況を伝える広告素材を制作するほか、SNSなどを通じて観光需要に影響が見られる地域の安全情報や観光の魅力を発信する。政府としての情報発信も強化する。
さらに、旅行会社や航空会社などとの共同広告を展開。九州方面の旅行商品や航空券の販売を促進し、海外市場からの旅行需要回復を後押しする。
道路・河川・港湾などの復旧に283億円
災害復旧等には283億円を計上した。
道路災害復旧事業には112億8600万円を充て、国が管理する国道3号で橋梁損傷箇所などの復旧を進める。河川・土砂災害への対応には43億6500万円を計上し、球磨川、緑川、白川の3水系で損傷した河川堤防などを復旧するほか、地震の影響で一部崩落が発生した長崎県の雲仙・普賢岳の溶岩ドームについて緊急的な調査・測量を行う。
港湾災害復旧事業には107億3700万円を充てる。八代港では、岸壁などの損傷箇所について国が管理の一部を代行して応急復旧を実施するとともに、損傷した国有港湾施設の岸壁について本格的な災害復旧を進める。
このほか、病院などへの応急給水や被災した井戸の調査・復旧支援に4億6700万円、TEC-FORCEなどによる被災自治体支援に11億2600万円を計上。照明車による応急対策、給水機能付き散水車による給水支援、船舶を活用した給水・入浴支援、防災用コンテナ型トイレの設置などを実施する。
肥薩おれんじ鉄道の代行バスも支援
交通分野では、地震で被災した肥薩おれんじ鉄道の運休区間で実施する代行バスの運行を支援する。
鉄道事業者は施設の復旧費用に加え、運休による旅客収入の減少や代行バスの運行費用も負担することになる。長期間の運休が地域鉄道の経営に与える影響を抑えるため、1カ月以上の代行バス運行に伴う赤字の3分の1を国が補助する。
対象は肥薩おれんじ鉄道線で、地域住民の通学や通勤などの移動手段を確保するとともに、鉄道復旧後の運行継続を支える。
国交省は今回の予備費を通じ、被災した交通・生活インフラの復旧を進めるとともに、旅行料金の割引と国内外への情報発信を組み合わせ、九州地方の観光需要の回復を後押しする。