新潟県三条市とクロスボーダーは9月29日、「Facebookを活用した地域情報発信に関する連携協定」を締結した。市が毎月制作している広報紙などのコンテンツをFacebook向けに再編集し、市外・県外、さらに海外へ発信する。市民向けに作られてきた情報が、地域外の人にとっても地域を知るきっかけとなり、交流人口や関係人口の拡大につながるかを検証する。
「観光情報」だけではない地域の日常を発信
自治体による域外への情報発信では、観光名所やグルメ、イベントなど、来訪を促す情報が中心になりやすい。一方、全国すべての市町村が著名な観光地というわけではない。
今回着目したのは、自治体がすでに持つ広報コンテンツだ。広報紙には行政情報だけでなく、地域で暮らす人、歴史、文化、食、産業、イベント、自然など、その地域を知るための情報が継続的に掲載されている。三条市でも「ものづくり」に加え、農業や食文化、祭り、自然、地域で暮らし働く人々などを発信してきた。こうした「地域の日常」を外へ届けることで、「知らない地域」から「知っている地域」、さらに「気になる地域」へと関係を変えていけるかがポイントとなる。
▶開設したFacebook
日本のつくるが息づくまち 新潟県三条市
https://www.facebook.com/sanjo.japan
なぜ今、Facebookなのか
もう一つの注目点が、発信媒体としてFacebookを活用することだ。現在、自治体や観光分野のSNS活用ではさまざまな媒体が使われる一方、Facebookは以前に比べて積極的に活用される場面が目立ちにくくなっている。
これに対しクロスボーダーは、日本のFacebookには中高年層やビジネス層を含む利用者がおり、比較的長い文章で地域の歴史や文化、産業、人などを伝えられることから、地域のファンを増やす媒体としてもっと活用されてもよいとみている。行政側から見れば、これまで必ずしも重視してこなかったFacebookが、現在のSNS環境の中で地域外への情報発信にどこまで機能するのかも、今回の実証で見るべきポイントになりそうだ。
「地域のファン」を持つことの意味も変わる
こうした取り組みは、国が進める「ふるさと住民登録制度」の動きとも重なる。同制度では、地域にゆかりや関心を持つ人との継続的な関係づくりが想定されており、今後自治体にとって「地域に関心を持つ人と日頃からどうつながっておくか」は、より重要なテーマになりそうだ。
その点で、SNS上に地域への関心度が高いフォロワーを蓄積することを仕組み化することは、将来の交流人口・関係人口施策の土台にもなり得る。なかでもFacebookは実名やプロフィールを基本とするため、「何人いるか」だけでなく、どのような人が地域に関心を持っているのかが比較的見えやすい。この特徴が自治体のファンづくりにどう生かせるかも注目点だ。
全国の自治体にも応用できるモデルとなるか
協定期間は2026年10月1日から2027年3月31日。実証では、広報紙の記事を発信し、「域外へ届く→興味・共感→フォロー→継続的に地域情報に触れる」という循環から地域のファンを増やせるかを検証する。
全国の市町村では、広報紙をはじめとする地域情報が日々制作されている。それらを住民への情報提供だけで終わらせず、地域外との継続的な接点づくりにも活用できるのか。そして、Facebookが地域のファンを蓄積する媒体としてどこまで機能するのか。三条市で始まる半年間の実証は、観光地であるかどうかを問わず、交流人口・関係人口を増やしたい自治体にとっても、その可能性を考える一つの材料となりそうだ。
※サムネイルは、クロスボーダー佐藤泰也社長(左)、三条市の滝沢亮市長