AI英会話アプリ「スピーク」を運営するスピークジャパンはこのほど、2026年のゴールデンウィークを前に、英語学習経験者かつ海外旅行経験者536人を対象に調査を実施した。その結果、海外旅行需要の回復とともに、英語コミュニケーションに関する新たな課題が浮き彫りとなった。
調査は同社が今年4月、英語学習経験があり海外旅行経験を持つ全国の男女536人を対象にインターネット調査を実施したもの。
注目されるのは、海外旅行への高い意欲だ。円安や物価高、国際情勢の不安定さといった環境下にありながらも、73.2%が「GWに海外旅行へ行きたい」と回答。最大12連休という条件も相まって、アウトバウンド需要は依然として底堅いことが示された。
さらに、翻訳アプリやAI技術の普及により、「英語の壁が低くなった」と感じる人も8割以上に達しており、海外旅行への心理的ハードルは確実に下がっている。
“意味はわかるが話せない” 英語フリーズ現象が旅行体験を左右
実際の現地コミュニケーションではギャップが存在する。調査では、英語の知識があっても、とっさに言葉が出てこない「英語フリーズ現象」が多くの旅行者に見られた。
特にインプット重視型の学習者では、約半数が「3秒以内に英語で返答する自信がない」と回答。さらに、86.3%が「意味は理解できても無言になった経験がある」としており、知識と実践力の乖離が顕著となっている。
また、「英語が話せない不安」は旅行検討時の障壁にもなっており、インプット重視層では約6割が強い不安を抱える一方、アウトプット習慣層ではその割合が約2.4倍低い結果となった。

背景にある“完璧主義”と“未自動化” 言語学習の構造課題
麗澤大学の森秀夫教授は、この現象の背景として3つの要因を指摘する。
1つ目は、不安や緊張が発話を阻害する「情意フィルター」。
2つ目は、「正しい文法で話さなければならない」という過剰なモニター意識。
3つ目は、知識が実際の会話で使えるレベルまで定着していない「未自動化」の問題である。
特にインプット重視層の82.3%が「文法や表現が完璧でないと話しにくい」と感じており、これが瞬発的な会話を妨げる要因となっている。
“自分の言葉で伝える”体験が満足度を高める
一方で、英語を自力で使えた場合の体験価値は非常に高い。調査では、「自分の言葉で伝えられた時の満足度」が翻訳アプリ利用時と比べて約2.2倍高いという結果が出ており、言語コミュニケーションそのものが旅行体験の質を左右する重要な要素であることが示された。これは単なる利便性の問題ではなく、「体験の主体性」や「現地との関係性の深さ」に直結する要素といえる。
観光業界への示唆:言語体験の設計が“付加価値”に
今回の調査結果は、観光業界にとっても重要な示唆を含んでいる。従来、言語対応は「翻訳」「多言語表記」といったインフラ整備が中心だった。しかし今後は、
- 旅行者が自分の言葉でコミュニケーションできる環境
- 会話のハードルを下げる体験設計
- 失敗を許容する“対話フレンドリー”な受け入れ体制
といった「言語体験そのものの設計」が、付加価値創出の鍵となる可能性が高い。特にインバウンド市場においては、単なる受動的なサービス提供ではなく、旅行者が主体的に関わる「対話型体験」への転換が求められる局面に入っている。
AIが担う会話の前段階、旅行体験の質向上へ
こうした課題に対し、AI英会話などのアウトプット型学習が有効な手段として注目されている。実際に、スピークの継続利用者の92.7%が「英語知識を使える会話力に変えるのに役立つ」と回答しており、AIを活用した練習が「英語フリーズ現象」の軽減につながる可能性が示された。
AIは、対人コミュニケーションに伴う心理的負担を軽減しながら、繰り返し発話できる環境を提供する点で、旅行前の準備フェーズにおける有効なツールとなり得る。
“話せること”が旅の価値になる時代へ
海外旅行需要が回復する中、英語は単なる移動・手配の手段ではなく、「体験価値を拡張する要素」へと位置づけが変わりつつある。翻訳技術が進化する一方で、「自分の言葉で伝える体験」がもたらす満足度の高さは依然として大きい。
今後の観光においては、「どこへ行くか」だけでなく、「どう関わるか」が問われる時代へ。その中で、“話せる英語”は、旅の質を大きく左右する重要なファクターとなりそうだ。