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ホテル・旅館のAI・ロボットの導入補助、人手不足解消できる?

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「省力化投資促進プラン」や「省力化投資補助事業」をご存知だろうか?

これは、人手不足が特に深刻な業界や職種について、AIやロボットなどのデジタル技術を活用して、業務の効率化・自動化を進めることで生産性向上を目指すもので、内閣官房主導のもとで関係省庁が連携して支援や補助を進めているものだ。

ちょうど観光庁でも宿泊事業者を対象とした今年度の補助事業(補助金)の申請がこのコラムが公開される頃に締切となる頃だろう。

タイミング的に申請の参考とならずに恐縮だが、この補助事業がどういったもので、実際の宿泊事業の現場のリアルに本当に合ったものなのか、現場とのギャップがないのかを解説していこう。

翻訳システムから監視カメラまで幅広い補助対象

事前にチェックされていて、すでにご存知の方も多い内容かもしれないが、観光庁による「観光地・観光産業における省力化投資補助事業」は、観光地域づくり法人、観光協会、地方公共団体、公立学校などと連携した地域一帯での求人活動など人手不足を解消するための取り組みを行なう宿泊事業者が、人手不足や業務効率加のために導入するシステムや設備を購入する経費を最大1000万円補助してくれるというものだ。

つまり、観光庁が実施しているとはいえ、ホテル・旅館などのみが対象のもので、観光施設や観光ガイド、小売業や飲食店、旅客・運輸業などは対象ではない。これら対象外の業種の一部は、観光庁以外の省庁が補助事業を実施している。

また、補助の対象となるシステムや機器、設備は、自動化などのためのシステムやAI、ロボットなどで、採用費や広告費、人件費の補助といった直接人を採用するための支援ではない。

事業のチラシに記載している補助の対象をざっと挙げると、次のようなものが並ぶ。

自動チェックイン機、スマートロック・カードロック、翻訳・通訳システム、POSレジ、電子宿帳システム、キャッシュレス決済端末、PMS(ホテル管理システム)、宿泊予約システム、レベニューマネジメント、会計ソフト、清掃ロボット、スチームコンベンション、オーダーシステム、真空包装機、配膳ロボット、小荷物専用昇降機、インカム・無線通信機、監視カメラ…このような感じで、システムやロボットのオンパレードだ。

補助の対象となるシステムや設備の種類もかなり多いので、こうした機会に導入してみたいという事業者もあるかもしれない。もっとも、今年度(令和8年度)の申請はちょうど締め切る頃であるし、人手不足解消の取り組みなど、誰彼構わず募集できるものではないのだが。

効率化した余力を人手不足の領域に回す?

さて、補助の対象となっているシステムや設備が多岐にわたることで、システムや設備そのものに魅力を感じるホテル・旅館は多いと思われる。

しかし、補助対象のシステムや設備を導入することで、直接人材が増えるわけではないことに注意が必要だ。

この補助事業の流れとしては、仕事の自動化や効率化につながるシステムや設備の導入を補助し、自動化や効率化できた仕事で浮いた人件費や採用費、あるいはリソースを、人手不足の仕事に転換する形となる。

もちろん、人手不足の仕事内容と効率化の効果によっては、無人化・効率化で採用自体が不要になるケースもあるかもしれないが、無人化・効率化がゴールではなく、採用強化をまた別に実施しなければならないことが多い。

この点を間違って考えてしまうと、本来の課題解決と異なるシステムや設備を導入してしまって、効率化の効果も十分に得られず、人手不足の解消にもつながらないという結末になってしまうかもしれない。

効率化するだけ、強みを活かすだけではダメ

政府が公開している「省力化投資促進プラン」の取り組み状況を見ると宿泊業の事例も載っているが、自動チェックインシステムなどフロント業務を効率化するシステムの導入事例では、そのままフロントの人員数の軽減につながった例も記載されていた。

しかし、フロントへのシステム導入の事例でも、その他の接客業務にかける時間ができたことが記載されており、AIチャットボットや清掃ロボットの導入事例でも、それ以外の接客業務に時間をかけられるようになったことが記載されていた。

効率化した業務以外に柔軟にリソースを振り分けられればよいが、それができないと人手不足はまったく解消できない。

また、煮る・焼くなどを1台で対応できるスチームコンベクションオーブンの導入は調理の時間と人員を大幅に効率化できるかもしれないが、提供する料理のジャンルや方向性によってはかえって料理の質を下げる結果になるかもしれない。

清掃ロボットや配膳ロボット、その他の自動対応のシステムなども、接客でのふれあいが強みのホテル・旅館の場合、やはり強みを損ねる可能性がある。

効率化ができたとしても魅力を失ってしまっては本末転倒であるため、それまで強みとしてきたサービスの方向性とターゲット層を見極めた上での導入が必要だろう。

また、導入するのはシステムやAI、ロボットでも、これまでその現場を支えてきたのは人間であるため、配慮を一切せずに強引な導入を進めてしまえば、強みだけでなく全体が崩壊してしまう。

料理の強みを残すために厨房にはふんだんに人件費や採用費をかけ、フロントや清掃にシステムやロボットを導入するのも、反対に接客・おもてなしに人件費や採用費をかけ、表に出ない厨房をスチームコンベクションオーブンなどで効率化するのも、現場で働く人を無視し、無理やり短期的な効果を狙うやり方では、社内に歪みが生まれ、効率化や人材不足解消どころではなくなる。

補助事業に限らず、効率化や自動化のために導入するシステムや設備が、従業員の誰の仕事を楽にするもので、楽になった人を含めて社内全体がどんなサービス提供を目指すのかを導入前から明確に考え、社内全体との対話や共有を深めて、効率化というよりもシステムやロボットと人間を合計した社内の戦力の最大化を意識したい。

寄稿者 中島康恵(なかじま・やすよし)㈱シニアジョブ代表取締役

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