中国北東部の黒竜江省ハルビン駅から乗り込んだ新幹線(高鉄)の心地良い揺れと旅の疲れも手伝って寝込んでしまった筆者と友人は、「この席、私たちが予約しているのですけど、間違っていませんか?」という中国人夫婦の声で目が覚めた。
そんなバカな、昨日夕に指定券を買っている。切符を取り出して相手に見せたら、行き先である長春西駅は今しがた通過したと“逆襲”されてしまった。そういえば、さっき寝ぼけながら見た駅の表示は「長春西」となっていた。つまり我々は降りるべき駅で降りず惰眠をむさぼってたのだ。まもなく中国人の夫が女性車掌を呼んできた。
スマホの自動翻訳を使って、お詫びを伝え、車掌と共にデッキに移動。他の乗客からは、「あのふたりは無賃乗車なのかしら?」 そのような冷たい視線を感じながら顔から火が出る思いだった。列車はすでに長春西駅から20分ほど快走している。次の停車駅は1時間ほど先の鉄嶺西駅ということが分かった。その駅から戻りの列車はあるのか、指定券は買えるのか。不安がよぎった。すると車掌に詳しい事情を聞かれた。我々は日本人観光客で、今日中に長春に行かなければならない。ホテルも予約してあると、これまたスマホの自動翻訳で釈明した。
戻りの列車を無料手配、車掌、駅員のリレー誘導で無事目的地到着
車掌は、ここで待つよう自動翻訳で伝えて姿を消した。車掌が再び姿を現すまで10分足らずだったが、「もしかして罰金、一晩拘束もある?」などの思いがよぎった。車掌は一枚の紙を見せたうえで、鉄嶺西駅からクルマで長春まで送ることもできえるし、戻りの列車を手配するので、「どちらか希望を述べよ」と、これまた自動翻訳で伝えてきた。彼女が我々に手渡した用紙には、「この2名のアホな日本人は列車を乗り過ごしたので、無事長春まで送り届けることを願いたい」というような文面が書かれているらしかった。もちろん、「アホな日本人」とは書かれていないのだろうが。結局新幹線で送ってもらうことにした。

列車が鉄嶺西駅に到着したら、ホームに駅員が待機していて、戻りの列車に誘導してくれた。まもなくやってきた列車でも車掌に連絡がいっていたのか、指定席に案内してくれた。無事長春駅に到着。例の用紙を改札で見せたら、行ってよしだった。乗り越しと戻りの料金は請求されなかった。そもそも最初に買った切符の「長春西駅」自体が間違いで、本来は長春駅に行きたかったのだ。
何という幸運、何という寛大。というのも、中国の空港の出入国では、能面の係官がひと言も発っせず、パスポートチェックをすることが多かったからだ。また、今回は運賃が安かったせいもあり、しばしばタクシーに乗った。メーターがあるにも関わらず、乗る前に料金交渉をしなければならなかったり、行きは10元(約240円)だったのに、帰りは50元をふっかけられ、値切って20元にしたりと、たいした金額ではないのだが、不快だった。
そんな体験も忘れさせてくれた新幹線の出来事だった。何で親切だったのか。「アホな日本人だから大目にみるか」なのか。「外国人観光客には親切に接し中国のイメージアップにつなげよう」なのかは、うかがいしれないが……。
(新幹線の画像は記事とは関係ありません。)