観光庁の木村典央長官は10月21日の定例会見で、9月の訪日外国人旅行者数が前年同月比5.0%減の310万3700人となった一方、7~9月期の訪日外国人旅行消費額は前年同期比3.2%増の2兆2076億円となり、同期間として過去最高を記録したことを発表した。中国市場の落ち込みが続く中でも、1~9月累計では中国以外の主要22の国・地域が前年同期を上回り、「引き続き堅調な訪日需要があると認識」と述べた。会見では、11月からの消費税免税制度の変更や民泊の適正運営、観光事業者の個人情報管理などについても説明した。
訪日客数は1~9月で3073万人、長期的な動向を注視
日本政府観光局(JNTO)の推計によると、1~9月の訪日外国人旅行者数は前年同期比2.9%減の3073万200人。9月に累計3000万人を突破したのは、昨年に続いて2回目となった。9月単月では、主要23の国・地域のうち7の国・地域が9月として過去最高を記録した一方、16の国・地域で前年同月を下回った。木村長官は、減少の要因として一部の国での航空便数の減少、祝日の日程のずれ、燃油サーチャージの上昇などを挙げた。訪日客数はさまざまな要因に左右されるとして、「より長い期間における傾向を注視していくことが重要」と強調した。
中国からの9月の訪日客数は、前年同月比44.5%減の43万800人。減少幅は昨年12月以降で最も小さくなったものの、中秋節の休暇が昨年は10月、今年は9月だったことなどを踏まえ、「現段階で直ちに回復傾向にあるとまでは言えない」と述べた。国慶節の訪日動向については、10月の実績を確認する必要性を語った。
一方、7~9月期のインバウンド消費動向調査(1次速報)では、旅行消費額に加え、クルーズ客を除く一般客の1人当たり旅行支出も前年同期比6.1%増の23万3677円となり、同期間として過去最高を更新した。木村長官は、幅広い国・地域からの訪日促進と、消費単価の高い旅行者の誘致に引き続き取り組む考えを示した。
免税制度は11月からリファンド方式へ、円滑な移行を進める
外国人旅行者向けの消費税免税制度は、11月1日の販売分から「リファンド方式」に移行する。購入時には税込価格で販売し、出国時に税関が商品の国外への持ち出しを確認した後、消費税相当額を返金する仕組みとなる。木村長官は、免税購入品が国外に持ち出されず、国内で不正に転売・消費される問題に触れ、リファンド方式の導入によって制度の適正な運用が図られることに期待を示した。制度への国民の理解を得ることが、インバウンド消費を支える免税制度の継続・充実にもつながると説明した。
移行準備については、免税店のシステム対応は予定通り進んでいると業界団体から聞いていると報告。空港の手続き用キオスク端末も、税関と空港会社の間で設置準備が進んでいるとした。出国時の混雑を防ぐため、旅行前、旅行中、出国前の各段階で周知を行っており、「買い物消費に影響が出ないよう円滑な制度移行に向けて努めている」と述べた。
民泊は住民の生活環境を守ることが「大前提」
東京23区などで民泊の規制や運用を見直す動きが進んでいることについて、木村長官は「地域の住民の方々の生活環境を損なわないように運営されること、これが大前提」と述べ、自治体が地域の実情に応じて必要な対応を取れる環境づくりを重視する考えを示した。
観光庁は7月、地域の判断で事実上の立地規制を可能とする「ゼロ日規制」などに関する通知を自治体に発出した。木村長官は、住宅宿泊事業法の施行から8年が経過し、宿泊需要を巡る環境が変化する中、民泊になじまない地域への立地や、騒音などの迷惑行為への対応が不十分な事例も指摘されていると説明。施行状況に応じ、制度の見直しを随時進める。一方で、ホテルなどが少ない地方では民泊の果たす役割が大きいとも指摘。適切な管理を確保しながら、地域ごとに民泊の役割を発揮できるよう取り組む。
九州ふっこう応援割は「堅調」、需要の回復状況を検証
10月1日に始まった「九州ふっこう応援割」については、主要旅行会社などへの聞き取りを踏まえ、「総じて堅調に利用が進んでいるものと認識」と評価した。販売前から問い合わせがあり、発売直後に多くの予約が入ったほか、早期に販売上限に達したとの声も寄せられているという。
地震による旅行需要への影響については、応援割の利用状況や旅行会社への聞き取りから、需要は回復傾向にあるとの認識を示した。ただ、事業開始から間もないため、各県の予算執行状況や事業の効果を含め、旅行需要の動向を引き続き検証する。
個人情報管理を徹底、観光産業への信頼確保を求める
不正アクセスなどにより、観光関連事業者でも個人情報流出の可能性が疑われる事案が相次いでいることについては、利用者の不安を招き、「観光産業全般に対する信頼を損ないかねない」と述べ、早急な対応が必要だと強調した。
観光庁が所管する第1種旅行業者のエイチ・アイ・エス(HIS)と、旅行予約サイト「skyticket」を運営するアドベンチャーからは、個人情報保護委員会への報告や、影響を受ける可能性のある旅行者への連絡、原因究明と再発防止に向けた対応を進めているとの報告を受けていると説明した。
観光庁は両社に適切な利用者対応を求めるとともに、旅行業者に対し、関係法令の順守、個人情報の管理体制や取り扱い状況の点検などを徹底するよう通知した。宿泊業者にも、サイバーセキュリティー対策に関する注意喚起を周知したという。
カスハラ対策、人材の確保・定着にも重要
10月1日から改正労働施策総合推進法に基づき、全ての事業者にカスタマーハラスメント対策が義務付けられたことにも言及した。
宿泊・旅行業界では、対策マニュアルの作成や基本方針の策定、会員向け研修会の開催などが進んでいると説明。従業員が安心して働ける職場環境の整備は「人材の確保、定着の観点からも極めて重要」とし、厚生労働省や業界団体と連携して防止に取り組む考えを示した。
2027年の観光国際年へ、12月ごろから活動登録を受け付け
国連が定めた「持続可能で強靭な観光国際年2027」に向けては、9月25日に官民学で構成する「ナショナルコミッティー」を設置し、取り組みを始めたと説明した。同日には世界観光機関(UN Tourism)と連携したセミナーも開催した。
今後は同コミッティーを通じ、国内での活動の準備や実施、フォローアップを進める。国際年に関連する国内活動の登録と、公式ロゴマークの使用承認について、12月ごろから観光庁ウェブサイトで受け付けを始める予定だ。
各国から日本人旅行者の増加に期待
9月の出国日本人数は前年同月比6.3%増の約148万人、1~9月累計では前年同期比3.2%増の約1121万人となった。木村長官は、9月の「ツーリズムEXPOジャパン」に合わせて各国の観光大臣らと意見交換したことを振り返り、「日本に対する期待は大変高い」と述べた。日本との直行便の開設や、日本人旅行者の増加を望む声が多く聞かれたと紹介した。
取材 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通