外国人旅行者向け消費税免税制度が11月1日から「リファンド方式」に移行するのを前に、「2026年11月1日免税制度『リファンド方式』移行に関するメディア向け説明会」が10月22日、東京都港区で開かれた。全国免税店協会や関係省庁の担当者が登壇し、店頭で税込価格で購入した後、出国時の税関確認を経て消費税相当額を返金する新たな仕組みを説明。不正利用を防ぐとともに、特殊包装の廃止や免税販売手続きの委託範囲拡大を通じ、店舗の負担軽減と地方での買い物消費の拡大を目指す。
制度の信頼性を高め、ショッピングツーリズムを推進
全国免税店協会の秋田正紀会長は冒頭、免税制度が訪日旅行者の買い物消費を支え、地方の小売店や商業施設、観光地にも経済効果をもたらしてきたと説明。一方、免税購入品の国内転売などへの対応が課題となっているとし、「制度の信頼性を高めるため」、リファンド方式に移行すると述べた。関係省庁と連携し、円滑な移行と地方経済の発展に取り組む考えを示した。
観光庁観光戦略課の菅原晋也課長は、2025年の訪日外国人旅行消費額9.5兆円のうち、買い物消費が約3割の2.6兆円を占めると紹介。免税制度は買い物消費を下支えし、訪日旅行の主要な目的の一つであるショッピングを支える制度だと説明した。また、飲食店での食事やホテルへの宿泊、国内交通など、日本国内で消費するサービスには消費税が課されていることも確認。免税制度は、旅行者が物品を国外に持ち出すことを前提とした仕組みだと強調した。

店頭では税込購入、90日以内の出国時に確認
国税庁課税部消費税室の濱田正義室長は、新制度の主な変更点を説明した。11月1日午前0時以降の販売分から、免税店は対象商品を税込価格で販売する。旅行者は購入日から90日以内の出国時に、商品を国外へ持ち出すことについて税関の確認を受ける。免税店側は購入記録情報に加え、税関確認情報を保存することで免税の適用を受け、その確認後に旅行者へ消費税相当額を返金する。
質疑では、国内転売などの不正利用を防ぐ上でのポイントについて質問が出た。濱田室長は、税込価格で販売し、出国時に確認を受けたものについて返金する仕組みが重要だと説明した。
消耗品の50万円上限や特殊包装を廃止
制度移行に合わせ、一般物品と消耗品の区分、消耗品の購入上限額50万円、国内での消費を防ぐための特殊包装などを廃止する。購入下限額は、同一店舗で同日に購入した税抜金額の合計5000円以上とし、一般物品と消耗品を区分せずに判定する。
全国免税店協会の井原純子事務局次長は、商品を一般物品と消耗品に分けてシステムに登録する作業や、購入量に合わせて袋を選び、包装する作業が不要になると説明。店舗の作業負担が減ることで、旅行者の手続き待ち時間の削減にもつながると期待を示した。消耗品の上限撤廃により、高価格帯のワインなどの販売機会が広がることにも言及した。
空港では荷物を預ける前に税関確認
財務省関税局監視課の松田真吾課長は、空港での税関確認が、従来の保安検査後のエリアから、保安検査前の一般エリアに変わると説明した。旅行者は購入品の入った手荷物を航空会社に預ける前に、免税手続き用のキオスク端末などで確認手続きを行う必要がある。
端末にパスポートをかざすと「グリーン」または「レッド」の判定が表示される。グリーンの場合は税関確認が終了し、レッドの場合は税関職員に購入品を提示する。所持を確認できない場合は返金を受けられない。質疑では、実際の物品確認はレッド判定の旅行者に行うとし、判定基準は取締上の理由から公表しないと説明した。
菅原課長は、旅行前、旅行中、出国直前の各段階で周知を進めていると紹介。空港ではポスターやデジタルサイネージなどを活用し、荷物を預ける前に税関の端末へ立ち寄るよう案内する。
主要7空港ではVisit Japan Webも活用
デジタル庁国民向けサービスグループの古口卓哉企画官は、「Visit Japan Web」を活用した出国時のオンライン手続きを紹介した。
成田、羽田、関西、中部、新千歳、福岡、那覇の7空港では、国際線出発ロビーの手続き専用無線LANに接続できる指定エリアで、キオスク端末の代わりにスマートフォンなどから税関確認の手続きを行える。古口氏は、混雑時にも端末の列に並ばず、自身のスマートフォンで手続きできる点を説明した。
税関確認とは別に、返金先の登録も必要
井原氏は、返金業務への対応も免税店に求められると説明した。多くの店舗では、免税データを送受信する事業者や返金事業者を通じ、旅行者へ返金することになるという。
返金事業者を通じて返金を受ける旅行者は、税関確認とは別に、事業者のアプリやウェブサイトなどに、クレジットカードや二次元コード決済などの返金先情報を登録する必要がある。井原氏は、出国時の税関確認を案内するとともに、返金先の登録を店頭で確実に促すことが重要だと伝えた。
手続きの委託範囲を拡大、地域全体で消費を取り込む
免税販売手続きを外部に委託できる範囲も拡大する。従来は商店街や一つの建物など「特定商業施設」の範囲に限られていたが、その要件が廃止される。店舗は免税カウンターにシステム操作や多言語での説明などを委ねることで、人手不足や外国語対応といった課題への対応がしやすくなる。
同じ承認免税手続事業者に手続きを委託する免税店では、同日の購入分を合算し、税抜5000円の下限額を判定できる。土産品など、1店舗での購入額が下限に届かない場合にも、複数店舗での買い物を組み合わせて免税制度を利用できる。
井原氏は、和歌山県串本町や沖縄県石垣島などの取り組みを紹介した。串本町では離れて立地する店舗が連携し、面的な免税エリアの整備を進める。石垣島ではユーグレナモールに免税手続きのカウンターを設置し、周辺店舗と一体で免税販売に取り組む準備が進んでいるという。
売り上げへの影響、協会は負担軽減と販売拡大に期待
質疑では、手続きの追加や税込価格での販売が、買い物需要に与える影響についても質問が出た。
秋田会長は、特殊包装などの作業や確認事項が減り、店舗の負担軽減と旅行者の待ち時間短縮が期待できると説明。一方、従来は店頭で返金された現金を使って追加の買い物をする機会があったが、新制度ではその機会がなくなるとも指摘した。その上で、制度が円滑に運用されれば、販売する側にとってのメリットが大きいとの期待を示した。
井原氏も、出国時の確認後に返金する方式は欧州でも一般的だとし、「買い控えが起こるようなことは今は想定していない」と述べた。消耗品の上限撤廃による購入額の増加や、店舗の負担軽減による販売拡大に期待を寄せた。
取材 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通