東京の歴史文化やアミューズメントの中心地といっても過言ではない文京区後楽園。そして、そこには徳川家ともゆかりの深い小石川後楽園やアミューズメントタウン「東京ドームシティ(旧後楽園遊園地)」があります。一方、その隣には、文京区役所として建築された文京シビックセンターがあります。
東京ドームと高層ビルのシビックセンターは、飛行機からも目に入ってくる巨大な施設です。ちょうど2000年に完成しました。
役所は地域のランドマーク、究極の観光コンテンツ
前回「北とぴあ」の章でも触れましたが、東京都内の公共施設の高層ビル化が進んでいます。高層ビルではなくとも域内の有名建築物に移転する事例などもあります。そのため、「税金の無駄遣い」と揶揄される建物が少なくありません。この文京シビックセンターも、その代表例とされたビルでもあります。
区(市)役所は、地域住民が行き来しやすい至便な場所に作られることが少なくありません。その理由は、出向いていろいろな申請事務をしなくてはならなかったからです。それ故、地域住民へのサービス機能は、事務処理能力の向上させることに集中していました。

訪問する仕組みを、義務から目的に
しかし、今では、諸手続きをインターネット等で完了できる時代となりました。そのため、役所は多岐に渡るサービス機能を向上させ、整備しなくてはならなくなりました。
例えば、職員が利用するレストランの一般開放などもその事例の一部です。しかし、これからは、それ以上のことが求められます。それは、アミューズメント機能や商業施設などを併設して、地域住民が、わざわざやって来る機能・機械を設けることも必要だと考えます。そのため、ここ文京シビックセンターもその名の通り、多目的ホールを保有しています。そのため、有名なアーティストもコンサートなども開催されています。
また、展望ラウンジには食事施設も作られています。有名レストランが営業して、高層ビル故の素晴らしい景色と食事を楽しむことができます。
夕暮れの時刻は、至福の時に・・・
さて、その展望ラウンジは地上約105m、ビルの25階に位置しています。そして、東と西、北側の三方に展望ラウンジがあります。東側は、東京スカイツリーと東京駅方面のビル群を見ることができます。また、北側は、筑波山の遠望を楽しむことができます。そして、西側は、展望ラウンジの中でも秀逸な景観、至福の時を演出してくれます。特に夕暮れには、新宿の摩天楼の後方に富士山のシルエットが競演します。

どこで調べてやって来るのか。展望ラウンジは、日本人よりも外国人の方が多いことに気づきます。彼らは、まだ夕暮れになっていない時間から、その瞬間を待ちます。そのために、下調べを入念に行い、陽が落ちる時刻も把握しているようです。
訪日外国人から学ぶこと・・・どん欲に知恵を身につけて
訪日外国人のほとんどが、日本を訪れるのは一生に一度かもしれません。そのため、どん欲に知恵を身につけて、日本の隅々まで巡るのでしょう。このことは、日本人の旅行感が、外国人に比べて、まだまだ足りないのだと考えます。
観光業に携わる私たちも、もっと知恵を身につけなければなりません。その結果として、お客さまに満足いただけるようなサービスを提供することができるのです。現代はインターネット全盛の時代です。それ故、有人サービスは、お客さまを越える「生の声」をいかに提供できるかにかかっているのです。
観光業は参入障壁が低いために、サービス能力・機能が低くとも、生業として存続することができる産業です。今や、お客さまが、直接地域情報を知り得る時代となりました。それ故、私たちは「プロ」としての気概・自覚を持って、接客に当たらなければならないと考えます。
「摩天楼をひとつかみ」にできる素晴らしい景色を見た夕暮れ。この至福の空間の情報をしっかりと発信できれば、生き残っていくこともできます。このことを肝に銘じて、もう一度、初心に戻って心掛けたい大切なことだと感じた瞬間でした。
至福の旬感をお裾分け!



寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表
(これまでの寄稿は、こちらから)https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=181