気仙沼DMCは7月18〜20日、宮城県気仙沼市の漁業文化をテーマにしたモニターツアーを実施した。参加者は日本で働くシンガポールやルーマニア、フランスなど出身の20〜40代など約20人。今回は、初めて「神止り七福神舞」の体験プログラムを取り入れるなど、海と共に生きる気仙沼の人たちの姿を祈りと継承を伝える内容を用意。参加者、協力団体からも意見をもらいながら、今後は本開催に向けて準備を進める。
海と共に生きる気仙沼を伝えるツアー
ツアーは初日、東日本大震災遺構・伝承館の見学から始まった。津波の被害を受けながらも、そこに住み続け、海と共に生きる人たちの姿を伝えたい。そんな気仙沼DMCの思いに賛同する形で小鯖神止り七福神保存会と組み立てたプログラムだ。
80周年を前に光る「神止り七福神舞」
ツアーの中で初めての試みとなったのが、気仙沼市指定無形民俗文化財「神止り七福神舞」の体験だ。小鯖神止り七福神保存会が大切に受け継いできたこの舞は、再来年、設立80周年を迎える。
唐桑半島は、かつて遠洋漁業で大いに栄えた地域だ。夫や息子が荒波の海へ航海に出ている間、留守を守る神止り部落の女性たちが、彼らの安全と大漁を心から祈り、踊り継いできたのがこの舞だ。その伝統は先輩から後輩へと受け継がれ、近年は移住してきた若いメンバーも加わり、さまざまなイベントで披露されている。
移住者が救った、途絶えかけた伝統
そんな七福神舞にも、途絶える危機があった。高齢化が進み、若手の担い手がいない中で、どう守っていくかという課題を抱えていたのだ。その危機を救ったのが、東日本大震災の際、ボランティアとして気仙沼を訪れていた女性たちだ。気仙沼を好きになり漁師のお嫁さんになった女性、漁師を応援する女性など、さまざまな形で地域に関わる彼女たちが、七福神舞の新たな担い手になった。
「地域出身者でなければできない」というルールもなくし、彼女たちを歓迎して指導した地域のメンバーと、移住者の若いメンバーがともに作り上げてきたこの関係性こそ、体験する人に見て、聞いてもらいたい特別なものだと、主催者の1人は話す。
体験を通じて縮まる距離
体験ではまず、保存会員による演技を鑑賞したあと、参加者それぞれが役を決め、担当の各神々から舞の指導に加え着付け、化粧を施してもらう。見よう見真似で踊りに夢中になるうち、10分足らずで距離がぐっと縮まり、最後保存会、参加者全員での舞を終えたころには、参加者同士が握手やハグを交わし、感謝を伝え合っていた。
手作りのおもてなしで深まる交流
舞のあとは、保存会のメンバーが持ち寄った手作りの梅煮や大福を囲みながらの普段の練習の一服に混ざる時間も体験の一部とした。七福神舞への想いや、それを継承した女性たちへの想い、移住を決断し気仙沼で暮らすことを選んだきっかけ、地域の人への感謝など、海と共に生きる気仙沼の人たちと語り合う貴重な時間になった。
移住を決めた参加者の1人は「七福神舞もすばらしくてやってみたいという気持ちもあったし、こうやって手料理の作り方も聞ける時間も好きで本当にありがたく、ぜいたくだと感じている」と話す。
前を向いて進む気仙沼から吹く新しい風
震災を経ても前を向いて歩み続ける気仙沼では、地域の人と移住者がともに文化を受け継ぎ、新たな交流を生み出している。こうした取り組みが、地域文化の継承にもつながっている。
投稿者 ツーリズムメディアサービス特任記者 気仙沼DMC 熊谷綾