国土交通省は8月27日、令和9年度(2027年度)予算の概算要求で、一般会計に8兆7694億円を要求した。前年度当初予算比1.35倍で、このうち公共事業関係費は7兆6761億円、非公共事業は1兆933億円。「『強く豊かな日本』投資枠」には1兆5508億円を盛り込み、防災・減災や国土強靱化、観光立国、地域交通、物流、DXなどへの投資を進める。東日本大震災復興特別会計は359億円、財政投融資は2兆134億円を計上した。
令和9年度は「国民の安全・安心の確保」「持続的な経済成長の実現」「個性をいかした地域づくりと持続可能で活力ある国づくり」を3本柱に設定。人口減少やインフラ老朽化、大規模災害への備えに対応するとともに、観光立国や物流革新、地域活性化、「交通空白」の解消などを成長投資として進める。
観光は90億円、旅客税財源1800億円
観光分野では「持続可能な観光の推進」に90億円を要求し、前年度比1.22倍とした。インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立、国内交流・アウトバウンドの拡大、観光地・観光産業の強靱化を進める。
具体的には、戦略的な訪日プロモーションや国際会議などを通じた諸外国との交流拡大、民泊サービスの適正化を進める。国内交流・アウトバウンドでは双方向交流の拡大や国内交流の活性化に取り組み、観光地・観光産業では人材育成や観光統計の整備を進める。
国際観光旅客税を活用した施策には1800億円を要求した。前年度予算から大きく増額し、オーバーツーリズム対策や観光地の受入環境整備、持続可能な観光地域づくり、MICE誘致、DMOへの支援、スノーリゾート形成、地域資源を活用した観光コンテンツの強化などを検討する。具体的な事業や配分については、予算編成過程で詰める。
観光を単独の政策としてではなく、地域交通、道路、空港、港湾、まちづくりなどと組み合わせ、地域への人流や消費拡大につなげる考えも示している。
空港・道路など社会資本から観光を後押し
社会資本の整備・利活用を通じた観光振興も盛り込んだ。インフラツーリズムの推進をはじめ、地域の歴史・景観資源の活用、「みなとオアシス」の機能強化、道の駅やSA・PAのインバウンド受入環境整備などを進める。
観光地での移動円滑化に向け、高速道路の周遊パスや道路案内の改善、AI・ICTを活用した観光渋滞対策、ナショナルサイクルルートの走行・受入環境整備、水辺を活用した「かわまちづくり」なども推進する。
航空ネットワークの維持・活性化には150億円を要求した。羽田空港の空港アクセス鉄道やターミナル再編、成田空港の滑走路新設などの機能強化、那覇空港の国際線ターミナル地域再編などを進め、訪日外国人旅行者の受入環境向上につなげる。
鉄道では266億円を要求し、新空港線やなにわ筋線、東京メトロ有楽町線・南北線の延伸など都市鉄道の整備を進める。地方と都市部双方の交通ネットワークを強化し、国内外の人流拡大を支える。
宿泊・観光業などの人材確保は101億円
人手不足が深刻化する国土交通分野の担い手確保も重点化する。「運輸業、造船・海運業、宿泊・観光業等における人材確保・育成」には101億円を要求し、前年度比3.78倍と大幅に増やす。
宿泊・観光業では、観光地や観光産業を支える人材の育成などを進める。交通分野ではバス・タクシー運転者、航空機の操縦士や整備士、空港のグランドハンドリングや保安検査などの人材確保・育成を支援する。
観光需要が拡大する一方、宿泊、交通、空港など各現場で人材不足が課題となる中、処遇改善や教育訓練、生産性向上を組み合わせ、観光客を受け入れる地域の供給力を底上げする。
「交通空白」対策は835億円、前年度の3.61倍
地域交通では、「交通空白」解消の深化・加速化に835億円を要求し、前年度比3.61倍と大幅に拡充する。国交省は2027年度までの集中対策期間に、全国約3000カ所の「交通空白」の解消に道筋をつける方針だ。
地域の実情に応じ、デマンド交通や公共ライドシェアの導入、複数自治体・交通事業者の共同化や協業化、自動運転の社会実装、地域公共交通の維持・確保、ローカル鉄道の再構築などを進める。
「交通空白」は住民の日常生活だけでなく、観光地への二次交通や周遊にも影響する。地方部への誘客を進める上でも、駅や空港から観光地までの移動手段確保は重要となることから、観光と交通の両面から地域の移動環境を整備する。
二地域居住や関係人口の創出も推進
地域政策では、担い手確保のための地域間人材シェアなどにつながる二地域居住や「地域生活圏」の形成に1270億円を要求した。前年度比3.46倍となる。
二地域居住に向けた先導的な取り組みや、空き家を活用した居住環境整備、地域間のマッチングなどを支援。観光を軸とした関係人口の創出から、継続的な地域との関わりや二地域居住につなげる取り組みも進める。
離島、奄美群島、小笠原諸島、半島など条件不利地域への支援も拡充し、地域資源を生かした交流人口・関係人口の拡大や産業振興、移住・定住などを後押しする。
防災・インフラ老朽化対策も大幅に計上
安全・安心分野では、気候変動に伴う水害や土砂災害への「流域治水」に7473億円、大規模地震対策に3416億円を要求した。インフラ老朽化対策には1兆1591億円、防災・安全交付金には1兆1293億円を計上する。
道路、鉄道、空港、港湾、上下水道など観光や地域経済を支える基盤について、災害時にも人流・物流を維持できるネットワークの構築や、予防保全型のメンテナンスを進める。
国交省は2027年度予算で、観光、交通、地域づくりをそれぞれ独立した政策として進めるだけでなく、インフラ整備や人材確保、二地域居住、地域公共交通などを組み合わせることで地方への人流を拡大し、地域経済の成長につなげる方針だ。