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〈避暑旅〉雪のない野沢温泉って、どう

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8月下旬、午後5時過ぎの野沢温泉(長野県野沢温泉村)は涼しかった。最近は3拠点生活をしている友人の案内で、外湯の一つ、熊の手洗湯あたりから歩き始めた。(画像は野沢温泉蒸留所)

もう夏冬合わせて20回以上は来ていて、一人でも歩けるけれど、この日は初めて野沢温泉に来た人もいたから、同行し、初心に帰って謙虚に、温泉街のゴールデンルートを案内してもらった。

麻釜

まずは坂を登って麻釜(おがま)へ。90度以上の源泉が湧き、大釜、丸釜、ゆで釜などいくつもの湯だまりをつくっている。地元の人は今も山菜や野菜をゆでたり、あけびづるを浸したりと、生活の中で利用している。「野沢温泉の台所」とも呼ばれる場所だ。

高台から夕焼けの方向を見ると、妙高山など北信五岳の山並みが見えた。

数軒の土産物屋に沿ってカーブする細い道を下っていく。昔、このあたりに車で入り込んで、進退きわまった苦い思い出がある。下りきると、外湯の中でも王様格の大湯に出る。湯が熱くて、もう10年以上入っていない。

野沢温泉には13の外湯があり、「湯仲間」と呼ばれる村人が維持、管理している。観光客にも開放されているが、賽銭箱が置かれ、湯仲間への協力金として寸志をお願いしている。なかなか当たり前のことじゃない。感謝の気持ちで丁寧に使いたい。

左に旅館さかやを見送り、少し坂を登ると野沢温泉蒸留所があった。数年前にできたのは知っていたけれど、来るのは初めて。雰囲気がとてもいい。デザインって大事だなと思う。

両脇に並ぶ樽の間を進むと、椅子とテーブルを置いたスペースがあり、ここでジンが飲める。ショットグラスで5種類のジンを飲み比べるセットを頼んだ。

店員さんが一つ一つ細かく説明してくれたけれど、繊細な味の違いが分かる自信はない。それでも1種類は、はっきり違う味だと分かった。全部おいしかったですよ。

野沢温泉蒸留所の飲食スペース

ほかのテーブルでは女性2人が談笑したり、一人で本を読んだり、パソコンを開いたりしていた。夏の野沢温泉では、静けさの中、こうした過ごし方がいい。

野沢温泉蒸留所は2022年12月にオープンした。まずジンの製造、販売を始める一方、ウイスキーの製造、熟成も進めてきた。ジャパニーズウイスキーは木製樽で3年以上熟成することなどが基準とされている。

今秋、初めてのシングルモルトウイスキーを発売する予定だ。蒸留してすぐ商品にできるジンから始め、ウイスキーが育つのを待つ。蒸留所のスタートとして理にかなっているんだろう。

街カフェ

温泉街に人は少ない。でも、こうして開いている店もあり、屋外のテーブルでくつろいでいる外国人もいた。帰りは、道祖神祭りの会場まで下り、縁を回って熊の手洗湯あたりまで戻った。

毎年1月15日に開かれる「野沢温泉の道祖神祭り」は、日本三大火祭りの一つとされ、国の重要無形民俗文化財。25歳と42歳の厄年の男たちを中心に、高さのある社殿をめぐって激しい火の攻防が繰り広げられ、最後は社殿に火が入る。冬には大勢の人が集まり炎に包まれる場所も、夏の夕方は静かだった。

温泉街下に広がる田んぼ

街を歩くと分かる。野沢温泉は温泉だけじゃなく、水がとても豊富だ。坂道の両側には、ほとんど途切れることなく側溝があり、音をたて勢いよく水が流れている。

ほとんど柵がないから、酔っぱらって落ちる人がいるんじゃないかと心配になる。でも、ずっと柵がないんだから、そうそう落ちる人もいないんだろう。

温泉街をさらに下ると、一面に田んぼが広がる景色が素晴らしい。きちんと四角形に区画された段々の田んぼを「棚田」と呼んでいいのかは迷うところだ。温泉街を勢いよく流れる幾筋もの水が、この田んぼにも注がれているんだろうか。そして田んぼをずっと下り、国道を越えると千曲川が新潟方面へ流れている。

歩いて、眺めて、停まって、呑んで、浸かって、泊まる、雪のない野沢温泉って、どう。

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