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「なぜ大阪で、たこ焼き?」のその先へ 仮説は、現場でどう変わったのか。大阪湾で実践した“体験を消費しない旅”|みちくさFeelog #21

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2026年7月、みちくさFeelog #18で、私は一つの問いを投げかけました。

「なぜ大阪で、“たこ焼き”なのか?」

たこ焼きを本気でたどっていけば、大阪湾の海、生きもの、地形、漁業、食文化、祈り、防災まで、一つにつながって見えるのではないか。

そんな仮説から、8月に3回の親子向け関西夏合宿を実施しました。

#18では、この旅の狙いを、地域の魅力を「点」ではなく「つながり」として読み解くこと、そして観光を「世界の見え方を変える入口」にすることだと書きました。

そして実際にやってみて、私は一つ大きなことに気づきました。

仮説を持つことは大切。でも、現場はいつも、その仮説より面白い。

計画した通りに子どもが興味を持つわけではない。

同じ場所でも潮が違えば、全く別のフィールドになる。

予定していなかった人と出会う。

思いがけない生きものが現れる。

そして、大人が用意していなかった問いが、子どもの中から生まれる。

今回の記事では、#18で描いた「旅の設計図」が、実際の3日間でどう変わったのかを書いてみたいと思います。


#18で描いた“たこ焼きの向こう側”を、実際に自分の足でたどる旅が始まった。


「予定通りにいかない」が、旅を面白くする

第3回となった8月23日〜25日の旅では、船の運航条件などに合わせて、当初想定していた行程の順番も変更しました。

これは自然をフィールドにするプログラムでは、ごく普通のことです。

潮。

天気。

海況。

地域の人の仕事。

交通。

生きものの状態。

フィールドには、人間の都合だけでは決められない条件があります。

私はむしろ、そこに旅の大きな価値があると思っています。

すべてが予定通り進むのであれば、参加者は用意された答えを受け取るだけになりやすい。

でも、現場が変われば、

「じゃあ今日はどうする?」

「昨日と何が違う?」

という判断が必要になります。

自然や地域に合わせて、旅の側が変わる。

それ自体が、地域を理解することなのかもしれません。

最初に見たのは「地面が動いた跡」だった

深日港から高速船で大阪湾を渡り、淡路島へ。

最初に向かったのは北淡震災記念公園です。

1995年の兵庫県南部地震では、六甲・淡路島断層帯の一部が活動し、野島断層では地表に明瞭なずれが現れました。

写真で知るのではなく、

目の前で地面がずれている。

道路が動いている。

その一次情報の前に立つ。

ここで私が子どもたちに持って帰ってほしかったのは、「地震は怖い」という印象だけではありません。

地球が動く。

地形が生まれる。

山や島や海峡ができる。

その場所に人が暮らす。

そして時には、その同じ自然の力が災害として現れる。

美しい景色と災害は、全く別の話ではない。

これは#18で立てた仮説の一つでした。

でも実際に断層の前に立つと、「大地が動く」という言葉が、知識から身体感覚へ変わります。


教科書の中の“活断層”が、目の前の地面になる瞬間。


観光船が、災害時には地域をつなぐ船になる

私たちが利用した深日洲本ライナーも、この旅では面白い教材になりました。

普段は大阪湾を渡る観光・交流の航路。

でも、この航路には防災面での役割も期待されています。

実際に、道路が寸断された状況を想定し、深日洲本ライナーで支援物資を海上輸送する訓練も行われています。

つまり同じ船が、

平時には人を旅へ運び、

有事には人や物資を運ぶ可能性を持つ。

私は、こういう地域の仕組みにもサステナビリティを感じます。

観光だけのインフラでもない。

防災だけの設備でもない。

普段から地域で使われているものが、もしもの時にも地域を支える。

旅行商品をつくる時、観光資源だけを見るのではなく、こうした地域の機能まで読めると、旅の意味はずっと深くなります。

「もしも」の食を、自分でつくる

淡路島では、防災缶詰づくりも行いました。

好きな食材を考えて、自分なりの味付けをし、缶の中に詰める。

非常食は通常、完成したものを買います。

でも、自分でつくると問いが生まれます。

何を入れたい?

もし数日避難するなら?

好きな味があることは、非常時にどんな意味がある?

防災が、「大人が備えてくれるもの」から、自分で考えるものへ少し変わります。

そして夜には、今度は大阪湾で海ほたるを観察しました。

昼間には見えなかった小さな生きものが、暗い海の中で青く光る。

同じ海でも、昼と夜で世界が変わる。

#18でも「時間が変われば同じ場所の見え方が変わる」と書きました。

この旅では、そのことをさらに何度も体験することになります。


「非常食を知る」から「自分でつくる」へ。防災を自分事に変える。

昼には見えない海の世界。夜になると、同じ大阪湾が別の表情を見せる。


2日目は、地域を「観光地」ではなく「暮らし」として歩く

翌朝は5時半から天台宗・興善寺で修行体験。

精進料理もいただきました。

その後、友ヶ島へ渡り、自然や旧日本軍の要塞跡を歩く。

淡嶋神社に参拝し、地元の人が通うお好み焼き店で自分でお好み焼きを焼き、天草からつくられたところてんを押し出して食べる。

午後には磯へ入り、深日漁港のセリを見学し、漁師さんの船へ乗る。

旅行商品として見ると、かなり多くの「コンテンツ」があります。

でも今回、私が大切にしたかったのは、数ではありません。

寺。

島。

磯。

漁港。

市場。

食堂。

漁船。

一つずつを「体験商品」として切り離すのではなく、

その地域で人がどう暮らしているかを、つなぎながら見ること。

興善寺で触れた「縁起」という考え方を、私は旅の途中で何度も思い出しました。

科学と宗教を同じものとして説明するつもりはありません。

ただ、「何か一つだけで成り立っているものはない」という感覚は、大阪湾を見ている時にも重なりました。

タコだけがいるわけではない。

餌となる生きものがいる。

水がある。

漁師がいる。

港がある。

市場がある。

料理する人がいる。

食べる人がいる。

それぞれが関係しながら、地域が成り立っています。


【写真⑤:興善寺での修行】

キャプション:
早朝の山寺で過ごした時間。自然だけでなく、地域に受け継がれてきた価値観にも触れる。

【写真⑥:友ヶ島】

キャプション:
自然、地形、歴史が同じ場所に積み重なる友ヶ島を歩く。


「なぜ大阪で、たこ焼き?」を、自分の手でたどる

午後、深日漁港では、ハモ、タコ、タイなど、大阪湾から上がった魚介類が実際に競り落とされる様子を見ました。

その後は地元漁師さんの船へ。

牡蠣養殖の現場を見て、その場で牡蠣をいただく。

さらに航行中には、野生のイルカが船の横を走るという、誰も予定していなかった出来事まで起きました。

これがフィールドの面白さです。

偶然は、商品造成書には書けません。

でも、強く記憶に残るのは、こういう出来事だったりします。

港に戻ると、生きたタコやタイなどに触れ、命を締める場面も見ました。

その夜は、自分たちで調理します。

タコの滑りを取る。

鯛の鱗を取る。

三枚に下ろす。

刺身にする。

アラ汁をつくる。

鯛めしを炊く。

そして、最後にたこ焼きを焼く。

#18では、「たこ焼きの向こう側に大阪湾がある」と書きました。

実際にやってみると、

海 → 漁師 → 市場 → 命 → 調理 → 食卓

という流れを、子どもたちは一日の中で自分の身体を使ってたどっていました。

これが、企画書を読んだ時には想像しきれなかった部分でした。

食文化を理解するとは、由来を覚えることだけではありません。

その食べものが、自分の口に届くまでの関係を知ることでもある。


大阪湾から水揚げされた魚介が、地域の食へとつながっていく場所。

見る海から、仕事としての海へ。漁師さんの船で大阪湾の暮らしに触れる。

大きさ、重さ、動き、温度。画面では分からない「命」を自分の手で感じる。

海から食卓までを自分の手でたどる。「なぜ大阪で、たこ焼き?」の向こう側へ。


海から「いただいた」翌朝に、海のゴミを拾う

3日目の朝は、長松自然海岸で地域の皆さんとクリーンナップ活動を行いました。

ここで私が重要だと思ったのは、順番です。

最初から、

「海洋ゴミは問題です」

「環境を守りましょう」

と伝えるのではありません。

その前日までに、

海で遊ぶ。

生きものを見る。

漁師と話す。

タコに触る。

魚を食べる。

牡蠣を食べる。

大阪湾に、自分自身の記憶ができている。

そのあとに、ゴミを拾う。

すると、

「守らなければならない海」から、「自分が関係を持った海」に変わります。

これは今回、私が実践を通して強く感じたことです。

人は、知らない場所を守ろうと思うのは難しい。

まず触れる。

驚く。

楽しむ。

人に会う。

食べる。

好きになる。

その先に、

「この場所を残したい」

が生まれる。

自然を使わない。

でもなく、

使い尽くす。

でもない。

楽しみながら関係を持ち、その価値を知り、次へ残す。

私は今回、サステナブルツーリズムを少し身体で理解できた気がしました。


前日に大阪湾の恵みをいただき、翌朝は地域の皆さんと海岸へ。「使う」と「守る」を一つの旅の中につなぐ。


旅の前にはなかった問いが生まれた

クリーンナップ後、参加していた小学4年生の男の子が、帰宅してからも家族とこんな話をしていたそうです。

「海洋ゴミを一網打尽にする方法はないのかな?」

この子は、この夏に私たちと礼文島のフィールドにも一緒に行った子です。

礼文島と大阪湾では、

景色も違う。

生きものも違う。

暮らしも違う。

今回の問いが、どの経験から生まれたのかを単純に決めることはできません。

でも、いろいろな地域で一次情報に繰り返し触れることで、子どもの中に何が蓄積され、どんな問いが育っていくのか。

私は、そこに継続的なフィールド学習の可能性を感じています。

旅行の成果を、

「楽しかった」

「○○について理解した」

だけで測る必要はないのかもしれません。

旅の前には持っていなかった問いを持ち帰る。

これは、旅行商品をつくる立場から見ても、かなり面白い成果ではないでしょうか。

同じ磯なのに、5日違うだけで別のフィールドになる

今回、もう一つ強く印象に残ったことがあります。

泉南さとうみ公園のタイドプールです。

第2回の8月20日にも、ほぼ同じ場所で生きもの観察をしました。

そして8月25日、再び同じ磯へ。

ところが、風景が全く違いました。

8月20日は水位が比較的高く、多くの岩場が海水に覆われていました。

一方、8月25日は潮が大きく引き、普段は水の中にある岩や潮だまりが次々と姿を現しました。

同じ場所。

わずか5日違うだけ。

でも、

見える岩が違う。

潮だまりの数が違う。

探せる生きものが違う。

そして、人間の行動まで変わる。

私はここで、

「場所を知る」だけでは、自然を知ったことにはならない

と改めて思いました。

季節。

時間。

潮。

天気。

前回との違い。

そこまで見て、初めてフィールドが立体的になります。


8月20日の同じ磯。水位が高く、多くの岩場が海の中にある。

8月25日。潮が引くと、同じ場所にたくさんのタイドプールが現れた。


最終日、親まで海から上がってこない

今回、私が3日間で最も心を動かされたのは、この最終日のタイドプールでした。

潮の引いた磯へ入り、子どもたちがウニや魚、ウミウシなどを探し始めます。

網を持つ。

石の隙間を見る。

水の中に手を入れる。

しばらくして、周りを見て私は気づきました。

夢中なのは、子どもだけではありませんでした。

お母さんたちも、

海水に浸かりながら、本気で生きものを探していました。

時間を忘れている。

私はその姿を見ながら、

「やっぱり、みんな生きものが大好きなんだな」

と思いました。

でも、それだけではなかった気がします。

この3日間、

断層を見た。

大阪湾を船で渡った。

海ほたるを見た。

山寺で修行した。

島を歩いた。

漁師に会った。

牡蠣養殖を見た。

市場へ行った。

タコや魚に触れた。

命をいただいた。

自分で料理した。

そして朝、海岸のゴミを拾った。

そうした体験を経た最後に、もう一度、自分の身体そのものを海へ入れる。

3日間で頭と身体に入ってきたバラバラの情報が、最後の海で一つにつながっているように、私には見えました。


最後は子どもだけでなく、大人まで時間を忘れて海の中へ。探究は年齢を選ばない。


そして、企画者が決めた「正解」通りにはならない

今回、もう一つ面白い出来事がありました。

旅のあと、学校の宿題で、

「一番印象に残った生きものは?」

と聞かれた子がいました。

私たちは、

ウミウシかな。

タコかな。

野生のイルカかな。

海ほたるかな。

と考えてしまいます。

でも、その子が選んだのは、

旅の途中で偶然見つけたゴキブリ。

これを聞いた時、私は笑ってしまいました。

そして同時に、大事なことを教えられました。

企画者は、

「これを見せたい」

「これを学んでほしい」

と考えます。

もちろん、設計は必要です。

でも、

何を面白いと思うかまで、設計してはいけない。

子どもが何に反応するかは、本人が決める。

旅行商品でも、すべてを説明し、すべてを予定し、すべてを回収しようとすると、参加者が自分で発見する余白を失うことがあります。

私は今回、「予定しない余白を設計する」ことも、探究型の旅には必要なのだと改めて感じました。

旅行商品をつくる側から、今回見えたこと

今回の実践から、旅行商品造成について私自身が強く感じたことがあります。

一つ目は、体験の数より、体験同士の関係を設計すること。

寺、漁港、磯、食、防災を別商品として並べるのではなく、「なぜつながっているのか」が参加者の中で立ち上がる順番を考える。

二つ目は、地域の日常へ入ること。

有名観光地だけでなく、地元の喫茶店、寺の朝、漁師の船、毎週続けている清掃活動の中に、地域らしさが強く現れます。

三つ目は、自然条件を制約ではなく価値に変えること。

潮が違う。

天気が違う。

生きものが違う。

毎回同じ品質を再現するのではなく、「前回との違い」自体を学びに変える。

四つ目は、大人を“付き添い”にしないこと。

最後の磯では、親自身が夢中になっていました。

親子旅行の価値は、子どもだけに学ばせることではなく、大人も一緒に世界を見直すことにあります。

そして五つ目は、旅を旅の中だけで完結させないこと。

帰宅後に問いが残る。

家族で話す。

もう一度行きたくなる。

次の調査につながる。

私は、これからの地域旅行では、この「旅の後に何が残るか」が、ますます重要になると思っています。

「満足度」だけでは測れない旅の価値

旅行では、

参加者数。

売上。

満足度。

リピート率。

といった数字が重要です。

もちろん、どれも必要です。

でも探究型の旅では、それに加えて、

「旅の後に、新しい問いが生まれたか」

という指標があってもいいのではないでしょうか。

「あの魚は何だったんだろう?」

「なぜここだけ潮が引くの?」

「このゴミはどこから来たの?」

「また違う季節に行ったらどうなる?」

こうした問いは、再訪の理由にもなります。

学びの理由にもなる。

場合によっては、その地域と長く関わる入口にもなる。

これは観光から関係人口へつながる、小さなきっかけでもあります。

サステナブルとは、「使わないこと」ではなく「関係を続けること」

今回、大阪湾で改めて感じたことがあります。

人は海を利用しています。

魚を獲る。

牡蠣を育てる。

船を走らせる。

食べる。

遊ぶ。

旅をする。

だからといって、

「自然を守るなら、人は関わらない方がいい」

だけが答えではありません。

自然を使わない。

でもなく、

使い尽くす。

でもない。

サステナブルとは、自然との関係を切ることではなく、その関係を次の世代まで続けられる形にすることなのかもしれない。

海を知る。

海からいただく。

海を楽しむ。

そして、海へ少し返す。

そんな循環の中に、旅行者も入れる。

それができれば、観光は地域資源を消費するだけのものではなく、地域を未来へつなぐ仕組みの一部になれるかもしれません。

次は、大阪湾そのものを「研究室」にできないだろうか

これは、まだ完全に私個人のアイデアです。

今回、泉南さとうみ公園の近くで、生物系の専門学校の先生と偶然お会いし、名刺交換する場面がありました。

現時点で、先生とこの構想について何か相談しているわけではありません。

ただ、この出来事をきっかけに、私は勝手に次のみちくさを考え始めています。

「子どもが研究者になる大阪湾フィールドスクール」

です。

一回来て終わりではない。

同じ場所へ何度も来る。

潮位を記録する。

生きものを記録する。

前回と比べる。

仮説を立てる。

専門家の知見にも触れる。

そして、また海へ戻る。

観察。

記録。

比較。

仮説。

再調査。

このサイクルを繰り返せば、

大阪湾そのものが、大きな研究室になる。

旅行から学習へ。

学習から継続調査へ。

継続調査から地域との関係へ。

私は、そんな展開も面白いと思っています。

#18の仮説は、実践によって上書きされた

#18を書いた時、私は、

「なぜ大阪で、たこ焼きなのか?」

という問いから、地域の自然・文化・暮らし・防災を一つにつなげられるのではないかと考えていました。

実際にやってみて、その仮説はある程度正しかったと思います。

でも、それ以上に大切だったのは、

私たちが想定していなかったことが起きたこと。

イルカが現れた。

潮が違った。

親まで生きもの探しに夢中になった。

子どもが予定外の生きものに心を奪われた。

そして旅のあと、

「海洋ゴミを一網打尽にするには?」

という新しい問いが生まれた。

つまり、実践とは、

企画書で考えた仮説を証明するためだけにあるのではない。

現場に出て、自分の仮説を壊してもらうためにもある。

私は今回、そのことを身をもって感じました。

「なぜ大阪で、たこ焼き?」

から始まった旅は、

「海洋ゴミを一網打尽にするには?」 へ。

問いは変わりました。

でも、それでいい。

むしろ、

新しい問いが生まれたところから、本当の旅が始まるのかもしれません。

そして私自身にも、新しい問いが残りました。

これだけ豊かな南大阪・大阪湾の自然、文化、暮らしを、どうすればもっと多くの人に伝え、地域の未来へつなげられるだろう。

次のみちくさは、もう始まっています。

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