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APRCE TOKYO2026、東京で19年ぶり開催 MUFGが工芸の販路開拓と産地への誘客を後押し

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第22回アジア太平洋小売業者大会「APRCE TOKYO2026」が10月7~10日、東京国際フォーラムおよび周辺施設で開かれた。東京での開催は19年ぶり3回目。「小売業の未来~革新と普遍~」をテーマに、小売業の変革や日本のコンテンツとの連携について議論した。同時開催の展示会では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が工芸品の展示・販売を通じて日本のものづくりを披露。海外での販路開拓に加え、工芸への関心を産地への訪問につなげる取り組みも紹介した。

開会式では、阿波踊りなど伝統芸能が披露された
開会式では、阿波踊りなど伝統芸能が披露された

同大会は、18か国・地域の小売業団体が加盟するアジア太平洋小売業協会連合会(FAPRA)と日本小売業協会が主催。8日の開会式で、大会会長を務める日本小売業協会の野本弘文会長は、伝統的な商道徳を大切にしながら、ITやAIなどの技術を活用し、生活者に新たな価値や豊かさを提供する必要性を述べた。国や地域を越えた交流から友情と信頼を育み、新たなビジネスにつなげることにも期待を示した。

高市早苗首相はビデオメッセージを寄せ、アニメや漫画など、日本が誇るコンテンツの海外展開を後押しする大会になることに期待を示した。また、美容やファッション、食、観光など、日本ならではの美の価値観を体現する「Jビューティー」を、世界に誇るソフトパワーとして展開する重要性を指摘。小売業の関係者に「日本の美を体現する商材をたくさん発信していただきたい」と呼びかけた。

ビデオメッセージを寄せた高市早苗首相
ビデオメッセージを寄せた高市早苗首相

東京都の小池百合子知事は、AIによる需要予測や無人店舗など、小売業を取り巻く変化に触れる一方、人にしかできない温かなサービスの価値を強調。日本商工会議所・東京商工会議所の小林健会頭も、小売業が生産者と消費者をつなぎ、地域の文化やコミュニティを支える役割を担うと述べた。

コンテンツと小売をつなぎ、体験を生む

開会式後には、エンタメ社会学者の中山淳雄氏が「アニメ・マンガの第三次展開:リテールが育む体験型ビジネスの未来」をテーマに基調講演を行った。

中山氏は、アニメやゲームなどのコンテンツが、商品販売だけでなく、ライブやテーマパーク、飲食、旅行などの体験へ広がっていると説明。作品をつくる側と消費者をつなぐ場として、小売業が果たす役割を指摘した。ファンの関心や交流を生かして継続的な接点をつくり、コンテンツ産業と小売業が連携して事業を育てる重要性を訴えた。

MUFG、工芸の評価と販売を支える

展示会「RETAIL EXPO Tokyo 2026」の日本の文化・伝統・サブカルチャーゾーンでは、MUFG工芸プロジェクトの取り組みを紹介した。ブースでは輪島塗や備前焼、村上木彫堆朱、樺細工などの展示・販売に加え、佐渡無名異焼や有田焼を展示。芸術作品としての魅力と、暮らしの中で使う工芸品としての価値を伝えた。

MUFGの経営企画部ブランド戦略グループ部長である飾森亜樹子氏は、支援の対象を作家や次世代の担い手だけに限定せず、工芸を支える仕組み全体を捉えていると説明した。作品が社会に届き、評価され、その価値が高まることが、制作や人材育成を支えることにもつながるという。今回の出展については、アジアからの来場者との接点を通じ、新たな販路につながる可能性に期待を示した。海外で得た評価が日本に還元され、国内での工芸の評価を高めることも見据えている。

飾森氏は、工芸支援を社会課題の解決に向けた社会貢献活動と位置付けた。今後は、企業や団体が参加する支援の仕組みをつくり、活動を共にする仲間を増やすことで、継続的な取り組みに育てたい考えだ。

MUFG工芸プロジェクトブース
MUFG工芸プロジェクトブース

輪島塗、応援購入から継続的な需要へ

輪島塗を出展した石川県輪島市の輪島塗伝統工芸士会会長で松晃堂 坂口漆器店の坂口彰緒氏は、アジアの小売関係者に日本の工芸を知ってもらう機会として、今回の出展を評価した。一方、能登半島地震から2年9カ月が経過した産地の状況については、厳しさを語った。建物を解体しても再建に進めない例があり、自身が仕事場として使う建物も、屋内の給水設備の工事が進んでいないという。販売面では、震災直後に復興を応援する購入があったものの、その後は落ち着き、今年の売り上げは震災前の水準から遠いとの見方を示した。制作を続けるための資金が必要な中、継続的な需要をどう確保するかが課題となっている。

松晃堂 坂口漆器店の坂口彰緒氏
松晃堂 坂口漆器店の坂口彰緒氏

坂口氏は、国内市場に加え、海外にも漆文化への理解を広げたい考えだ。富裕層だけでなく、料理人や食文化に関わる人たちに器を使ってもらうことも目指す。ただ、レストランなどへの販売が十分に広がっている段階ではない。海外では漆が一般的な塗料と同じように捉えられることもあるとし、木の樹液を使う素材としての特徴や文化を伝える必要性を指摘した。

新たな商品づくりでは、大阪の泉州桐箪笥と輪島塗を組み合わせた「からくり箪笥」の開発も進める。内部には桐箪笥の技術を、外側には布目を見せる輪島塗の仕上げを取り入れ、試作品を制作した。産地同士の連携で、伝統技術を生かす新たな用途を探っている。

海外展示を、産地を訪ねる旅につなぐ

北前船交流拡大機構理事長代行でANA総合研究所副社長の森健明氏は、海外で工芸品を紹介することが、日本の産地を訪ねるきっかけにもなると話した。

森氏によると、イタリア・ミラノでのイベント出展時に、展示を見た来場者から「もっと知りたい」と相談があり、日本の旅行会社による手配で、備前などの産地を訪ねる個別旅行につながった事例があったことを紹介。「訪問先で工芸品を購入した人もいた」と森氏は話す。作品との出会いから産地への関心を育み、現地での理解や購入につなげる工芸をテーマにした旅行の可能性を示した。

今回の展示では、QRコードを使った作品紹介や音声ガイドの閲覧・利用データを活用。森氏は、アジアと欧州の来場者がどの作品に関心を寄せるかを比較し、「今後の販売対象や訴求方法を考える材料にしたい」と説明した。

同機構の役割は、自ら販売を担うことより、自治体や事業者が活動できる場をつくり、地域と企業をつなぐことにある。森氏は、催事で生まれた関係を継続的な地域訪問や事業につなげる必要性を強調する。今後は工芸に加え、北前船ゆかりの食材や日本酒も組み合わせ、道の駅や飲食店などで地域の文化に触れ、購入できる機会を広げる構想も描いている。

取材 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通

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