国土交通省の国土技術政策総合研究所(国総研)は9月11日、浴槽を設けず、シャワーなどで入浴する「浴槽レス浴室」の設計ガイドライン案を公表した。在宅高齢者の入浴中の溺水事故防止や、介護時の入浴介助負担の軽減を目的に、利用者の安全性や移動、介助のしやすさを確保するための浴室の広さなどを整理した。
2024年に家庭で溺水により死亡した人は7775人で、このうち95%が65歳以上だった。高齢化に伴って在宅介護の増加が見込まれる中、浴槽への出入りを介助する行為は、入浴者と介助者の双方に負担やリスクがあるとしている。
浴槽をなくし、シャワー中心の入浴を想定
「浴槽レス浴室」は、浴槽を使わずに入浴するための浴室。利用者が浴用椅子に座ったり、シャワーキャリーなどを使ったりしながら洗髪や洗体を行い、必要に応じて介助者も入室する。戸建て住宅や集合住宅の新築だけでなく、既存浴室の改修にも適用できるとしている。
国総研は2021~2023年度、「浴槽レス浴室のバリアフリー基準に関する研究」を実施。実物大の浴室実験装置を使い、介護や入浴介助の経験がある30~70代の男女17人を対象に、入浴動作や介助時に必要な広さ、手すりの位置などを検証した。
シャワーキャリー利用は2.40平方メートル以上を推奨
実験結果を基に、利用方法ごとの広さの目安も示した。シャワーキャリーを使用し、介助者が入る場合は、短辺1500ミリ以上、面積2.40平方メートル以上を「推奨」とした。標準は短辺1400ミリ以上、2.24平方メートル以上、下限は短辺1300ミリ、2.08平方メートルとしている。
自立歩行する利用者に介助者が付く場合は、短辺1200ミリ以上、面積1.8平方メートル以上を推奨。標準は1.68平方メートル以上、下限は1.56平方メートルとした。
溺水リスク低減と在宅介護の負担軽減
浴槽をなくすことで、浴槽内での溺水事故を防ぐだけでなく、入浴者を浴槽へ出入りさせる介助作業を減らせる可能性がある。国総研は、自宅で家族による介助を安全かつ容易にし、入浴機会の増加や利用者のQOL向上にもつながることを期待している。
今回のガイドライン案は、研究成果をまとめた国総研資料第1357号「浴槽レス浴室のバリアフリー基準に関する研究」として公表した。国総研は、浴槽レス浴室について、高齢者に配慮した設計や安全性を判断するための技術基準整備につなげていく。