「さいたま市観光ボランティア・浦和ガイド会」(浦和ガイド会)は9月30日、競馬場ツアーへの参加が初めての女性を対象に「女性だけで楽しむ浦和競馬場バックヤードツアー」を開催した。当日は26人が参加。浦和駅から競馬場までのまち歩きに加え、関係者以外は通常立ち入ることのできないバックヤードの見学、初心者向けの競馬講座、希望者による馬券購入までの体験を提供した。
浦和ガイド会は、現在35人の会員が活動する観光ボランティア団体。さいたま市を中心に歴史や文化、まちなみなどを案内するまち歩きを企画・実施しており、さいたま市浦和区の市民活動ネットワークメンバー、さいたま観光国際協会の会員としても活動している。今回のツアーでは、地域の観光資源の一つとして浦和競馬場に着目し、競馬初心者でも参加しやすいよう「女性だけ」「参加が初めての人」を対象に企画した。
同ツアーは、参加費が300円。午前10時30分にJR浦和駅中央改札前に集合し、徒歩で浦和競馬場へ向かった。競馬場ではバックヤード見学のほか、貴賓室での昼食、初心者講座を実施。午後は希望者が船橋競馬のレースを対象に馬券購入にも挑戦した。
浦和駅から競馬場へ、まちの歴史も案内
競馬場までの道中も、浦和ガイド会ならではの内容となった。浦和駅から前地通り南商店街を通り、競馬場へ向かう約15~20分のコースで、江戸時代から続く道や三本木稲荷、庚申塔など地域に残る歴史を紹介した。
前地通りは、かつて浦和と鳩ヶ谷を結ぶ主要な道として使われ、大正期には小型バスも走っていたという。浦和競馬場が開場すると競馬場への通り道としてにぎわい、現在も商店街には「競馬場への近道」と記したフラッグが掲げられている。昔ながらの商店と新しい店舗が混在する地域の姿にも触れながら、一行は競馬場を目指した。

「普段は入れない」競馬場の裏側へ
浦和競馬場では、大井競馬場や浦和競馬の中継などでキャスターを務めてきた高井理恵氏が案内役を担当。「普段は入れないところを皆さんにご案内させていただきます」と参加者を迎え、競走馬と人がレースへ向かうまでの流れを解説した。
バックヤードに入る際には、競走馬への感染症対策として参加者が靴底を消毒。馬が競馬場に到着してから、馬体重の測定、個体識別、蹄鉄の確認、鞍などの装着を経て、パドック、本馬場へと向かう一連の流れをたどった。競走馬には個体識別のためのチップが入っており、出走する馬に間違いがないか確認するなど、公正なレースを支える仕組みについても紹介された。
さらに、スタートを担うスターターや、レース中の馬・騎手の動きを確認する監視業務など、普段は観客から見えにくい仕事にも話が及んだ。競馬は騎手や調教師だけではなく、発走や審判、施設管理など多くの人によって支えられていることを、バックヤードを歩きながら学んだ。

馬頭観音からたどる競馬場の歴史
ツアー後半では、場内に残る馬頭観音も紹介された。石碑には「昭和九年建立」と刻まれており、現在の浦和競馬場が開場する以前から存在していたものとなる。さらに「浅草寺」の文字も確認できることから、浦和ガイド会ではその由来を調査してきた。
ガイド会は浅草寺への問い合わせに加え、かつて存在した大宮競馬場についても調査。大宮競馬場の平面図に「観音堂」と記されていることなどから、大宮競馬場にあった馬頭観音が浦和競馬場へ移された可能性を考えているという。ただし、ガイドからも「確証はない」と説明があり、ガイド会による調査の経緯を含めて、浦和の競馬史を考える話題として紹介した。

貴賓室で昼食、初心者にも分かる「競馬の楽しみ方」
バックヤードを巡った後は、普段とは異なる競馬場の雰囲気を味わいながら貴賓室で昼食。午後には高井氏による「競馬の楽しみ方講座」が開かれた。
高井氏は、競馬には「賭け事として賭けるのを楽しむ方」「血統とかを見てレースを予想するのを楽しまれる方」「純粋にお馬さんを見るのが楽しい方」など、さまざまな楽しみ方があると説明。競馬を知らない参加者でも楽しめるよう、競走馬がレースへ向かうまでの流れから、馬体重の見方、パドックや返し馬で確認するポイント、競馬新聞の読み方まで順を追って紹介した。
パドックでは、馬の姿勢や汗の量、歩き方なども予想の材料になるという。新聞の情報だけでなく、当日の馬の様子を実際に見ることも競馬ならではの楽しみ方として伝えた。

100円から馬券購入にも挑戦
講座の後半は馬券の買い方を学んだ。単勝、複勝、ワイドなどの違いを解説し、高井氏は初心者について「最初もう単複ぐらいでも大丈夫です」とアドバイス。単勝馬券は馬名が券面に入るため、「すごくいい記念になります」と紹介した。
参加者は競馬新聞を手に、予想記者の印や過去の成績などを確認。マークカードに開催場、レース番号、馬番号、金額などを書き込み、希望者は100円から実際の馬券購入にも挑戦した。当日は浦和競馬の本場開催日ではなかったため、船橋競馬のレースを対象に体験した。講師に質問しながらカードを記入する参加者の姿も見られ、初心者講座で学んだ内容をその場で実践する時間となった。参加者からは、「興味半分で参加したが、裏側やスタッフの方々と触れ合ったことでファンになった」「競馬場のスケール感に圧倒されたとともに、町の歴史や景色も深く知ることができた。今度は友達とまた来たい」といった声が上がった。
今回のツアーは、単に競馬を見るだけではなく、浦和のまちを歩き、競馬場の裏側を知り、競馬を支える人や仕組みに触れた上で、実際のレースや馬券にも親しむ一日となった。女性限定、初心者対象とすることで競馬場を訪れたことのない人にも参加のきっかけをつくり、地域に根付く浦和競馬場の新たな魅力を知る場となった。

取材 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通