学び・つながる観光産業メディア

8月の訪日客9.6%減、出国日本人も3.6%減 観光庁、九州ふっこう応援割の便乗値上げには「厳正に対処」

コメント

観光庁の木村典央長官は9月16日の定例会見で、2026年8月の訪日外国人旅行者数が前年同月比9.6%減の309万8900人、出国日本人数が同3.6%減の158万8600人だったと発表した。1~8月累計では訪日外客数が同2.7%減の2762万6300人、出国日本人数は同2.8%増の972万4500人となった。

訪日市場では中国が8月に前年同月比59.0%減の41万8000人と大幅に減少した一方、韓国や台湾、香港などは増加。JNTOが集計する主要市場のうち14市場が8月として過去最高を記録し、イタリアとスペインは単月として過去最高となった。中国を除いて単純計算すると、8月の訪日客数は前年同月比約11%増となり、市場による濃淡が鮮明になっている。

訪日外客数前年比出国日本人数前年比
1月3,597,881人-4.9%1,072,602人+17.6%
2月3,466,848人+6.4%1,093,250人-7.4%
3月3,619,159人+3.5%1,518,999人+6.7%
4月3,692,364人-5.5%1,042,087人+8.4%
5月3,560,256人-3.6%1,127,482人+4.7%
6月3,148,754人-6.8%1,090,195人+3.4%
7月3,442,100人+0.1%1,191,298人-1.2%
8月3,098,900人-9.6%1,588,600人-3.6%
1~8月累計27,626,300人-2.7%9,724,500人+2.8%
出典:日本政府観光局(JNTO)。2026年7・8月の訪日外客数、8月の出国日本人数は推計値。

訪日客の8月減少、航空便や燃油サーチャージも要因

8月の訪日客数の減少要因について木村長官は、複数の要因が重なっており一概には判断できないとした上で、一部市場における航空便数の減少、前年との祝日日程のずれに加え、燃油サーチャージの上昇も一因として考えられるとの認識を示した。

東南アジアではタイが前年同月比9.3%減、フィリピンが11.6%減、ベトナムが7.5%減となった。タイとフィリピンについて木村長官は、祝日の並びや航空便数の減少などが影響したとの見方を示し、「単月だけで見るのではなく、全体を通して状況を確認していく必要がある」とした。JNTOもタイについて航空便の減便や中国旅行の人気、フィリピンについて祝日の並びや航空便数減少などを減少要因として挙げている。

熊本地震、九州のキャンセルは前年同期の2倍超

会見では、令和8年熊本地震や豪雨災害による観光への影響についても質問が相次いだ。観光庁が国内の主要旅行会社などに聞き取りを行ったところ、熊本県では地震発生直後の旅行予約キャンセルが前年同期の5倍以上となり、九州全体でも2倍を超えるキャンセルが発生したという。一方、千葉県や北陸地方の豪雨については、発災当日や翌日に一時的なキャンセルが出たものの、現時点では大きな影響は生じていないとする旅行会社が多かった。

インバウンドについては、JNTOが重点市場の旅行会社などに聞き取りを実施。熊本県を含むツアー行程の調整が一部市場で見られたものの、SNSや現地メディアでの報道は発災直後に比べ落ち着いており、豪雨災害についても訪日旅行に関連して大きく話題となっている市場はないとして、木村長官は日本全体へのインバウンドへの影響は「現時点では限定的」との認識を示した。

九州ふっこう応援割、便乗値上げなら登録抹消も

九州の旅行需要回復策として、10月1日宿泊分から「九州ふっこう応援割」が始まる。九州での1泊以上の旅行・宿泊商品が対象で、割引率は原則50%、熊本県と鹿児島県は60%。割引上限は宿泊単体商品・交通付き宿泊商品1泊で1人2万円、2泊以上の交通付き宿泊商品で3万円、2県以上に宿泊する周遊型商品で3万5000円となる。実際の予約開始日や販売方法などは各県が決める。

一部のオンライン予約サイトでは販売開始直後に予定枠が終了したケースも出ている。木村長官は、応援割への関心が高いこと自体は九州の旅行需要の早期回復や新たな需要喚起につながるとして「望ましい」とする一方、今後は宿泊施設の直接販売や旅行会社を通じた販売も順次始まるとして、各県の執行状況を確認した上で施策の効果を検証する考えを示した。

一方、応援割に合わせた宿泊料金の引き上げについては踏み込んだ姿勢を示した。木村長官は、人件費などを背景とする通常の値上げとの区別は難しいとしつつ、「割引分をあらかじめ上乗せする」ような価格設定は事業趣旨を逸脱し、認められないとの考えを示した。観光庁は各県に対し、不当な価格設定を旅行会社や宿泊事業者に行わせないよう周知するとともに、合理的な範囲を超える高額な価格設定が明らかな場合には国への報告や補助対象事業者の登録抹消を含む厳正な対応を求めている。旅行業界団体を通じても、便乗値上げを行わないよう直接要請しているという。

観光庁には8月28日の事業発表以降、多い日には1日数十件程度の問い合わせが寄せられており、予約開始時期や割引対象期間、割引率などに関する質問が中心という。過度な来訪が復旧・復興を妨げるとの懸念については、避難者の宿泊状況なども考慮して事業開始を10月1日以降とし、各県が復旧状況に応じて予約開始日や対象期間を設定できる制度としたと説明した。

能登の観光入り込み客、震災前の6割程度

能登半島の観光復興について木村長官は、和倉温泉では約半数の宿泊施設が営業を再開するなど復旧が進んでいる一方、能登半島地域の観光入り込み客数は震災前の2023年と比べて「6割程度」にとどまるとの認識を示した。観光庁は9月8日から「能登半島地震からの復興に向けた観光再生支援事業」の2次公募を開始している。

木村長官は、地元の意見を聞きながら、北陸応援割のような旅行需要喚起策を改めて実施することについても検討する考えを示した。

国際観光旅客税、事業の5割超を有識者が点検

国際観光旅客税を財源とする事業の適正性についても言及した。同税は2026年7月から出国1回につき1000円から3000円に引き上げられており、観光庁は2027年度概算要求で同税を財源とする事業に1800億円を要求している。木村長官は、国際観光の振興のため旅行者に特別な負担を求める税であることから、事業の透明性、適正性、効果を確保することが重要だとした。

その具体策として、本年度の行政事業レビューでは、通常は全事業の2割程度を有識者点検の対象とするところ、国際観光旅客税関係事業については5割を超える事業を対象とした。検証結果は2027年度予算編成に反映する方針。また、9月14日に開かれた交通政策審議会観光分科会でも、旅客税を財源とする事業について国際観光振興や受益者負担との関係などを議論しており、今後の予算編成に有識者の意見を反映していくとしている。

JESTA導入で訪日客の免税確認方法を見直し

2027年度税制改正要望では、観光庁が出入国在留管理庁などと共同で、電子渡航認証制度「JESTA」の導入に伴う外国人旅行者向け消費税免税制度の確認事務などの見直しを求めている。現在、免税店ではパスポートに押された上陸許可の証印などを使って免税購入対象者を確認しているが、JESTA導入後は査証免除国・地域からの短期滞在者について旅券への証印が省略されるケースが生じるため、新たな確認方法が必要となる。

JESTAは渡航前に渡航目的や滞在先などの情報を提供して認証を受ける仕組みで、政府は2028年度中の導入を目指している。木村長官は、免税制度について「インバウンドの買い物消費を支える大変重要な制度」と位置付け、不正利用を防ぎながら免税店事業者と旅行者双方の利便性を確保できる制度・現場運用を検討するとした。

ツーリズムEXPOジャパン2026、9月24日から東京で

木村長官は冒頭、9月24~27日に東京ビッグサイトで開催される「ツーリズムEXPOジャパン2026」にも言及した。東京での開催は2年ぶり。2026年は「進化する旅のカタチ」をテーマに、観光DXや旅行の高付加価値化、多様化する旅行ニーズに対応した展示や商談などが行われる。9月24、25日は業界・プレス日、26、27日は一般日となる。

初日の24日には第10回「ジャパン・ツーリズム・アワード」の表彰式を開催する。今回は「内閣総理大臣賞」が新設されており、木村長官は観光分野で内閣総理大臣賞が授与されるのは初めてとして、旅行産業全体の質の向上につながることへの期待を示した。

また、愛知・名古屋を中心に開催されるアジア競技大会・アジアパラ競技大会については、JNTOや愛知県と連携し、大会を訪れる観客や選手団に地域の魅力を発信することで、東海エリアだけでなく全国各地への周遊を促す方針を示した。

情報提供:トラベルビジョン(https://www.travelvision.jp)

/
/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/
/