大丸松坂屋百貨店の九州探検隊は7月20日の海の日、対馬の海洋プラスチックごみを価値ある資源へと再生する「対馬WAVEプロジェクト〜地球への恩返し〜」を始動した。2022年のSDGs包括連携協定に基づき実行委員会を立ち上げたもので、対馬から新しい循環型社会モデルを世界へ発信する。
日本一海ごみが流れ着く島
プロジェクトの舞台となる対馬は、対馬市によれば“日本一海ごみが流れ着く島”と言われ、年間約4万立方メートルもの海洋ごみが海岸に漂着する。市の予算と国の補助金をあわせて年間約2.8億円を投じても、回収・処理できるのは全体の約3割にとどまり、回収が追いつかない構造的な課題を抱えている。
漂着ごみの約7割は海を越えて流れ着いた海外由来の「越境ごみ」だ。一方で対馬を訪れる観光客の多くは韓国をはじめとする海外からの来訪者で、訪れた人が「自国にもつながる海の課題」と出会う世界的にも稀有な島となっている。
中村人形四代目・中村弘峰氏が制作を監修
プロジェクトのシンボルとして、対馬産100%の海洋プラスチックごみを国際水準のパブリックアートへと昇華させ、対馬の港に設置する。制作を監修するのは、福岡市の中村人形四代目・中村弘峰氏だ。
中村氏は東京藝術大学大学院を修了し、日本伝統工芸展朝日新聞社賞や福岡市文化賞などの受賞を重ねてきた作り手で、伝統と現代を往復する斬新な作品で国内外から高く評価されている。曾祖母が対馬出身で、今年2月末には漂着ごみであふれる対馬の海岸を視察し、強い思いでプロジェクトに参画した。世界中の海を漂ってきた素材を、博多人形の技法によって国際水準のパブリックアートへと生まれ変わらせる。
ごみを「対馬発の素材」として捉え直す
本プロジェクトは「回収・処分」の発想を超え、海洋ごみを“対馬発の素材”として捉え直し、廃棄物をより価値の高いプロダクトへ生まれ変わらせる「アップサイクル」の発想に立つ。素材化の技術支援とプロセス設計は、プラスチックのアップサイクルに取り組むムツミ工業とPrecious Plastic唐津が協力する。
WAVEには、海の「波」だけでなく、人と人がつながる「輪」、そして小さな行動が大きなうねりとなって広がっていくことへの願いが込められている。実行委員会は、海洋ごみの課題を「誰かの問題」ではなく自分事として共に考えるきっかけにしたいとしており、プロジェクトの進行管理や情報発信を担う「対馬WAVEプロジェクト事務局」も設置した。
作品イメージは制作の進行に合わせて順次公開される。
投稿者:西川 佳克(にしかわ・よしかつ)TMS記者 / 株式会社東京山側DMC